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「偵察任務の司令部が存在する」

――ということは、希望者の身元を判断して任務に就いてもらうかどうかを判断する権限を持つ、哨兵のコアグループが存在するということですね。

L: まあ、そうとも言える。これらの判断をおこなったり、作戦を出したりする「総隊」が存在している。

――この総隊が一般の哨兵たちに指令を下すと。

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L: いや、総隊のメンバーはそれぞれ、各哨兵部隊の小隊長1人とだけ接続する連絡員になっている。指令を受けた小隊長が、その小隊のメンバーに任務を伝達する形だ。逆に一般の哨兵が得た情報は、小隊長から担当の連絡員を通じて総隊に上がる。

Lの証言をもとに筆者が作成した、香港デモの哨兵部隊の組織図。各小隊の小隊長は総隊の連絡員1人しか接触しておらず、仮に末端の細胞がやられても、総隊は生き残る仕組みだ ©安田峰俊

――なるほど、他の小隊にどういう指令が下っていて、どの地域に展開しているかは、末端細胞である一般の哨兵や小隊長は知らないわけですね。それに、末端細胞が得た情報はいったん総隊のチェックを経たうえで「公海」に公開されるわけですから、デマが入り込む余地はほとんどない。

L: そういうことだ。このシステムは6月12日に確立し、その時点で哨兵は合計で100人ほどいた。現在の人数は教えられない。ただ、地味な任務なのは確かだから、これを嫌がって前線で戦う勇武派に転向するメンバーもいる。

高校野球ばりの「伝令」も

――哨兵部隊を運用する上でのトラブルはありませんでしたか。

L: 当初、一部のメンバーが自分の意見を情報に反映させすぎる傾向があった。「次は〇〇に向かえばいいと思う」といった意見を伝えがちな傾向があったんだ。ただ、(それはデモ全体の作戦判断に支障をきたすので)よくないと、哨兵部隊のなかで話し合って解決した。6月半ばからはそういうことはなくなっている。

――哨兵は香港の各地でこっそり見張りをおこなっているわけですか。

L: そうだ。わかりやすいところでは、湾仔の香港警察総部(警視庁に相当)を見張るような行動だ。事前に地図をよく調べて、たとえば歩道橋の上のような見通しのいい場所で観察をおこなう。他に衝突の前線で戦っている勇武派に情報を伝達する任務や、前線の状況をレポートする遊撃任務も存在する。

警察が放った催涙弾とデモ隊の放火で混乱する衝突現場。こんな状況のときに悠長にスマホを見ている余裕はないため、哨兵が直接走って最前線への情報伝達をおこなっている。8月31日、銅鑼湾付近で撮影 ©安田峰俊

 

――前線への情報伝達も、やはりTelegramを使うわけですか。

L: ああ。ただ、衝突中にいつもスマホを見られるとは限らないので、直接前線に向かう伝令をおこなうときもある。