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警察発砲&マスク禁止法―― 混迷の香港デモを指揮する“謎の組織X”が存在する?

2019香港デモ 現地ルポ#4

2019/10/05

genre : ニュース, 国際

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「この連絡は15秒後に消去される」

――ところで、総隊の連絡員は小隊長と一対一で接続しているという話ですよね。でも、仮に小隊長が逮捕された場合は、チャットの履歴から芋づる式に総隊まで捜査が伸びるんじゃないですか?

L: だからTelegramは便利なんだ。Teregramには「シークレット・チェック」モードがあって、このモードで会話をした場合、どちらか一方が消去操作をすれば、相手先のスマホからも会話履歴が消滅する仕様になっている。これなら片方が逮捕されても証拠は残らない。

――でも、消去される前に警察が相手のスマホをチェックすることもあり得るのでは?

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L: シークレット・チェックモードでの会話なら、重要な命令や危ない内容のメッセージについては自己破壊タイマー(Self-Destruct Timer)を1秒~1週間の範囲で設定できる。たとえば15秒に設定した場合、受信者がメッセージを読んでから15秒後、当該のメッセージがスマホから消去される仕組みになっているんだ。

9月29日、市街地で警官隊が催涙弾を発射したことで巻き込まれた市民。この日は子ども連れの参加者もいる平和的なデモにも催涙弾が撃たれ、インドネシア人の記者がゴム弾で目を銃撃されるなど、警察側の暴力行為が目立った ©安田峰俊

――香港のデモ隊がなぜLINEやWhatsAppではなくTelegramを使うのか不思議でしたが、納得しました。

L: 他に一定時間が経ってからメッセージを送信する機能もデモ参加者に好まれている。大規模なデモに出向く前に、自分の本名や連絡先、弁護士の電話番号などを、信頼できる仲間宛てに送信予約を掛けておくんだ。これなら、仮に逮捕された場合は○時間後にかならず仲間にその連絡が届くから、スムーズに救援してもらえる。逮捕されず無事にデモを終えられたときは、その送信予約を解除すればいい。

――Telegramはロシア製のアプリで、かのイスラム国も使っていたといいます。確かに反体制運動には非常に使い勝手がよさそうなツールですね……。

600人でビラを校閲

 Lへのインタビューは以上だが、実はこうした組織は哨兵部隊のほかにも確認されている。たとえばビラなどを作る文宣(プロパガンダ)部隊だ。デモ隊のスローガンが貼られたレノンウォールのビラやポスターは、かなりクオリティが高い。