折田さんには色々なものを味方にしてほしい
――運命の4局目へ臨むにあたっての心境は?
「書籍にも書いたことですが、自分の中の毒を出すことをひたすら繰り返しました。口に出すのではなく、ノートに書くことで感情をコントロールするんです。3局目を負けたのはすごくきつかったものの、自分の心が整理されたのが大きかったです」
――果たして第4局に勝利し、夢を実現されました。直後に将棋会館そばの中華料理屋で行われた祝賀会には、私もご一緒させていただきました。
「あの時はすごかったでしょ。テレビのニュースで大きく扱われた時はびっくりしました。周りの皆さんがいい空気を作ってくれたおかげです」
――改めて、折田さんをはじめ、これから編入試験を目指す方々への言葉をお願いします。
「やはり『人』です。繰り返しますが、僕は周りの人に助けてもらった、1人では受からなかったと思います。自分は周りにそのような空気を作ってもらえました。
折田さんがそのような空気を自ら作らないといけないのでは大変だと思います。でも、それができたからここまで来たのかとも考えますね。折田さんに受かってもらいたいと思う人が多いのと、試験自体に興味がないという方が多いのでは状況が全然違います。これは僕だけではなく、瀬川さんの時もそうでした。折田さんには色々なものを味方にしてほしいと思いますし、彼が多くのものを背負うとまた変わるのではないかとも考えます」
オジサンも頑張りますよ
最後に、合格してからの棋士人生について聞いた。
「それからが大変ですよ。若手棋士には『こんなオッサンに負けるか』という気持ちで向かわれてきます。勝負である以上当たり前で、これは将棋界の歴史の繰り返しですね。でも、先日の木村一基新王位じゃないですが、オジサンも頑張ります。今期の僕は7割くらい勝っているし、けっこう頑張っているんじゃないかな(笑)。
あと、僕は『将棋を通して皆様の笑顔のもとになる』をモットーにしています。失笑でも何でも笑顔を引き出せれば勝ちと思っています。折田さんが夢を実現することで、そこから笑顔の輪が広がっていけばいいんじゃないかなと思いますね」
写真=佐藤亘/文藝春秋
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