負けた人は待っている間に「詰将棋でも解いてなさい」
――では、そのときから上田さんは強いなという印象があったわけですか。
及川 ないない! ないですよ。負けたのも覚えていません。ただ、それからめっちゃ指したんですよ。
――週に1回とか?
上田 いや週に3回くらいですね。ただ二人じゃないですよ。鈴木さんなど誰かがいて3人で。
――3人って、どういう風に指すんですか?
上田 負け抜けですね。負けた人は待っている間に「詰将棋でも解いてなさい」という感じです。
――そこからお付き合いが始まったと。
及川 まあ。
――それは及川さんが、プロになる前ですね?
及川 そうです。三段リーグのときですね。20歳でプロになった期(2007年4月から2007年9月まで行われた第41期奨励会三段リーグ)の途中ですかね。
彼女がタイトルを取ったのは私のおかげ(笑)
――では、お付き合いしたのが、大きなモチベーションになってプロになれたと。
及川 そのようにいろんな人に言われるんですけどねぇ(笑)。ま、そういうことにしておきます。
――では、プロになったときは、上田さんも大喜びされた?
上田 いやぁ、それほどでもなく(笑)。電話がかかってきたんですけど、「ああ、よかったね」くらいでした。
――まあでも、及川さんが強くなったのは、上田さんとたくさん指したのが、けっこう影響していると。
及川 いやあ、私は逆だと思っているんですけど。彼女がタイトルを取ったのは私のおかげだと(笑)。
一時は将棋をやめようかなと
上田さんが第4期「マイナビ女子オープン」に勝ち、初めてのタイトル「女王」を獲得したのは2011年のこと。二人の付き合いが始まってから4年ほど経ったときのことだ。
及川 二人でいっぱい指しましたが、初めて指したときと比べてずいぶん強くなっていたんですよ。
上田 ただですね。彼と初めて指したころは、私は将棋をほとんど勉強していなかったんですよ。12歳で女流棋士になってからモチベーションがなくなって、一時は将棋をやめようかなとも思っていたんです。ただ高校卒業を前にして進路を考えたとき、やっぱり将棋をやろうと改めて勉強を再開した。そんな状況と、彼といっぱい指した時期が重なっているんです。さすがに彼と指していただけじゃ強くならないですからね。