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特集観る将棋、読む将棋

2019/10/31

タイトルをどうしても取りたいとは思わない

――及川さんは、自身で勝負に淡白なところがあると話しておられましたが、上田さんはどうですか?

及川 私よりは負けたくないという気持ちが強いと思います。まあ、でもそれほど強いほうではないですかね。

上田 タイトルをどうしても取りたいとか、そういう感じはないですね。目の前の将棋に負けたくないというのはありますけど。

――勝つと機嫌は?

及川 そりゃ機嫌はいいですよね。

上田 ルンルンしています(笑)。でも、それは当然ですよ。

――負けたときの立ち直りは?

及川 私は遅いと思います。

上田 私は早いでしょ?

及川 早い、早い。

 

――何か立ち直る方法ってありますか?

及川 私は、対局の次の日に予定を入れるようにしています。原稿の仕事などを強制的に入れておくと、気が紛れますから。

上田 私は落ち込むことに意味を感じないんですよ。やらなきゃいけないこともたくさんあるので、彼がいつまでも落ち込んでいると、腹が立ってくるんですよ。負けて落ち込むなら、次に勝てばいいじゃんというタイプの人間ですね。

最近、泥臭さが加わった

――上田さんから見て、及川さんの将棋はどんな将棋ですか?

上田 さわやかです。

――それは……泥臭くない? 

上田 そうですね。そこが問題でもあったんですが、最近、泥臭さが加わった感じですね。

及川 いやぁ、それほど変わってない……。

上田 多少は粘るようになったでしょ。

 

――終盤の粘りというのは、詰将棋の力とは違うものですか?

及川 詰将棋を解くのが早い人で終盤が泥臭い人はいませんね。私はそれほど早いほうではないですが、今、藤井聡太さんとか、泥臭くないですよね。斎藤慎太郎さんも棋風はさわやか。泥臭いっていうのは、実戦派の人なんですよ。詰将棋が好きな人は、さわやかな感じなんですよね。

理論的に説明できる将棋が好き

 及川拓馬六段は、詰将棋作家としても知られた存在。『将棋世界』では「詰将棋サロン」の連載を持っている。それだけに、詰将棋解答選手権で5連覇するなど、同じく詰将棋を愛する藤井聡太七段は、とても気になる存在だという。

及川 今、対戦したい棋士といえば、藤井聡太七段です。

――それはなぜですか?

及川 藤井さんの将棋って、私から見るとしっくりくるんです。「どうしてこの手が指されたか」をすべて理論的に説明できる。私はそういう将棋が好きなんですよ。

――プロの将棋でも、そういう手ばかりじゃないと。

及川 そうです。将棋って、理論的な手ばかりじゃなくてもいいんです。理屈では説明できない実戦的な手というのもあります。でも、私は、理論的な将棋が好きなんですね。