2月7日、著名なエコノミストとして知られるアメリカISIグループ会長のエド・ハイマンは、CNBCのインタビューに応える形で、2020年第1四半期の中国のGDP成長率が0%であると予測するコメントを出した。この数字の真偽はさておき、ウイルス禍が中国経済に天文学的な規模の損害を与えるのは間違いない。
中国の中央銀行である中国人民銀行は、経済テコ入れのために1兆2000億元(約19兆円)を金融市場に供給すると発表したが、これは体調不良を覚せい剤で無理やり回復させるようなもので、副作用も大きいだろう。
今回のウイルス流行は、もはや中国政府が何をやっても中国に巨大なダメージと民心の動揺を残すことが確実だ。習近平の顔の見えなさが、責任問題から逃げる目的ゆえだと推測するのは容易である。
過去の台湾のヒマワリ学運(2014年)や香港の反政府デモ(2019年)への対処のまずさを見ても、習近平は突発的な大規模トラブルへの対処を苦手とする政治家ではないかとも思える。
ウイルス収束後、“大量処罰”が待っている
新型コロナウイルス発生以来の習近平の動きは、中長期的にはすくなからぬ禍根を残すはずである。普段は大いばりをしていながら、本物のピンチの際には部下に責任をなすりつけて前線から逃亡する指揮官は人心を得られないからだ。
習近平は政権の成立以来、従来の中国ではながらくタブー視されてきた個人崇拝や個人独裁を積極的に推し進め、毛沢東並みともいわれる強大な権力を手にした。結果、中国の官僚たちは保身と習近平への忖度が最優先課題になり、失点を犯さないために最低限の仕事しかしなくなったり(「不作為」)、まずい情報を上にあげる行為をためらう傾向が常態化した。
ウイルス流行の初期段階で地方政府が情報隠蔽をおこなったことや、問題に言及した医師らへの処分は、習近平体制の負の側面が要因だとみていい。すくなくとも当局内部の常識的な人間や、知識人・メディア関係者、さらにネットユーザーにはそうした考えを抱いた人がかなり多い。
おそらく数カ月後、ウイルス流行が収束したあとは習近平からの巻き返しがある。現在、必死で問題告発の声をあげている一部の武漢市民に対する大規模な処罰や、習近平に対して批判的な動きをみせた当局関係者やメディア関係者に対する猛烈なパージがおこなわれるはずだ(中国語で「秋後算賬」という)。