史上最高と言われる2019年のM-1。なぜあれほどの“神回”になったのか。出場した漫才師の連続インタビューでその答えに迫っていく。
能や狂言を取り入れた漫才で大きなインパクトを残した「すゑひろがりず」。彼らが目撃した神回の舞台裏とは?(全3回の2回目/#1、#3へ)
◆◆◆
「ミルクボーイさんはずっとネタ合わせしてました」
――舞台裏の話もうかがいたいのですが、楽屋はみなさん一緒なのですか。
三島 一緒です。けっこう、和気あいあいとしてましたね。
南條 初出場組が7組いたので、その分、空気がやわらかかった。常連のかまいたちさんと、2度目の見取り図とかは、ちょっと違う空気を発していたと思いますけど。
――放送は6時34分からスタートでした。
南條 オープニングのところは、まだ楽屋でモニターを見てるんですよ。
三島 1組目のネタが始まるのが7時10分ぐらいなんですけど、その直前にスタジオに入るんです。そのあたりは、みんなさすがにピリついてましたね。ただ、1組目にニューヨークが呼ばれると、「がんばれよ!」という雰囲気があって。戻ってきても「よかったで」と。ほかのコンビのときも同じでした。全員がライバルであり、仲間でもあるという感じなんです。
――セットの裏側で順番を待っているときは、他のコンビともけっこう会話をしたりするもんなんですか。
南條 する人はしてますね。あとは、それぞれネタ合わせをしたり。ミルクボーイさんはずっとネタ合わせしていた印象がありますね。合間ができると、壁に向かって小声で合わせたり、裏の方に行って練習したり。
「あれはM-1史に残る名言ですよ」
――1番手のニューヨークは、松本人志さんに「ツッコミが笑いながら楽しんでいる感じがあんまり好きじゃない」と言われ、まだ講評の途中であるにもかかわらず、屋敷裕政さんが「最悪や!」と噛みつきました。軽くキレたかのような返しだったので、会場が変な盛り上がりを見せました。
南條 あれは屋敷のファインプレーでしょうね。
三島 マジの気持ちもあるし、あのまま引き下がったら自分たちは何も残せないと思ったんでしょうね。魂のひと言ですよ。
南條 屋敷は、ああいうところで噛みつきそうなキャラでもあるんで、いいプレゼンにもなった。芸人の先輩方も、ニューヨークの平場(ひらば=普通の会話の部分)での絡みはすごく評価してましたね。大会全体の流れで言えば、あの一言がつかみになったと思う。
三島 M-1史に残る名言ですよ。
――すゑひろがりずは、5番手のからし蓮根と入れ替わる形で4位となり、上位3組が座れる暫定ボックスを追われました。控え室に戻った時は、そのニューヨークだけがいたわけですね。