「過去最高って言ってもいいのかもしれないですね。数年前なら誰が出ても優勝していたんじゃないか、というレベルの高さでした」
大会の締めに審査員のダウンタウン松本人志がこう語るほど、2019年のM-1は沸いた。では何がこの“神回”を作ったのか。出場した漫才師たちのインタビューから、その答えに迫っていく。
最初に証言してくれたのは「すゑひろがりず」。和服姿で鼓を使い、能や狂言を取り入れた漫才で大きなインパクトを残した。ただ、すゑひろがりずが登場したのは、2番手かまいたち、3番手和牛(敗者復活枠)が高得点を出した直後。
「大会のピークが過ぎた……」と他の芸人が思うなか、彼らだけが「この4番目で出させてくれ」と思っていた理由とは――? (全3回の1回目/#2、#3へ)
◆◆◆
「かまいたちさん、和牛さんのあとは焼け野原でした」
――出番順については当初、どのように考えてたんですか?
南條 なんならトップでもいいぞ、って。
三島 準々決勝、準決勝と、比較的早い出番で、そこまでの重い空気を変えられたというイメージがあったんで、できれば序盤、僕らがドーンと火ぃつけたみたいな空気を出せればいいなと思っていました。
――ところが、その目論見は物の見事に外れてしまいました。
三島 4番手と早い出番でしたけど、直前の和牛さん、その前のかまいたちさんと死ぬほどウケていましたからね。火ぃつけるどころか、すでに焼け野原でした(笑)。
「番組のピークちゃうか」和牛の敗者復活発表
――かまいたちが2番手で660点という高得点を出したときは、どう思いましたか?
三島 優勝やろ、って。
南條 後ろで出番を待っていた何人かが「もう、優勝やん」って言ってましたね。これ、優勝するやつ(流れ)や、みたいな。
――そして、3番手で注目の「敗者復活」のクジが出て、復活組発表では大方の予想通り、和牛が選ばれました。
南條 和牛さんって発表された瞬間、スタジオの歓声が異常やったんです。揺れるぐらい。後ろの連中は、今、番組のピークちゃうかみたいな。
――その和牛は期待に違わぬハイレベルなネタを披露し、かまいたちに次ぐ652点を叩き出したわけですよね。
三島 もう番組が終わった感がありましたね。本命、全部出てもうた、と。この後、どないすんねんって。ほとんどが初出場組だったので、誰も興味持ってくれないんじゃないかなみたいな。
南條 これ、エンディング? って感じですよ。ここでエンドロール入っても誰も怒らんやろって。裏でみんな苦笑いしてました。
――この後、出て行くコンビは大変ですよね。どうしたって比べられてしまいますからね。
三島 でも「もうここは行かしてくれ」と思ってましたね。
――「焼け野原」なのに?