「一生懸命指せたと思います」
2月4日に行われた将棋のC級1組順位戦・藤井聡太七段と高野秀行六段の対局後のインタビューで、敗れた高野六段が残したコメントである――。
この対局は、前日に《藤井聡太七段との対局に向けて 47歳おじさん棋士は「今までにないほど勉強している」》という記事が配信された影響もあってか、多くの人が藤井七段だけでなく高野六段にも声援を送り、広く注目されることとなった。
「より対局が楽しみになった」
記事を読んだ人からのこんなコメントには、ライターである私も編集部も今まであまり例のない「対局前インタビュー」に、大きな手応えを感じることができた。そして、対局後の話も聞いてみたいと思うようになった。
「今までにないほどした」という勉強は、実際の対局で活かされたのか? 一度も話したことがないという藤井聡太と盤を挟んでみて、どういった印象を受けたのか? そして事前インタビューで「いいスーツを着ていく」と言っていたのに、なぜスーツを着ていなかったのか?
あの対局からちょうど1週間経った夜に、高野秀行六段に話を聞いてみた。藤井聡太七段との対局を終えた後日談インタビューである。
◆ ◆ ◆
実は私、前科がありまして……
――いろいろ質問したいことはあるんですが、まずスーツのことを聞いていいですか? スーツじゃなかったですよね(笑)。
高野 あの事前インタビューの少し前に、名古屋で指導者の方にお話しする機会があって、そこにいいスーツを着ていったんですよ。だから藤井戦でもこれを着ていこうと思っていたんですが、前日に改めて試着してみると……きつい(笑)。
――入らなかった?
高野 いや、入ったんですが正座ができないなぁと。言い訳すると、いつも行っているプールが最近、改装工事中で……。
――運動不足だったと。
高野 それでこれは無理だなと。実は私、前科がありまして、対局中にお尻が破けたことがあるんですよ。
――ふはは(笑)。
高野 そのときは午前中だったかな、野月くん(浩貴八段)がトントンと肩を叩いてきたので、「なんだよ?」といったら「お尻、破れてるよ」と(笑)。
――さすがに今回は、お尻が破けたらマズイですよね(笑)。
高野 そうでしょ。だから、いつもと同じ格好にしたんです。でもね、あれも一応仕立てのジャケットなんです(笑)。
【#将棋 ニュース】
— AbemaTV将棋ch(アベマTV) (@abematv_shogi) February 4, 2020
藤井聡太七段、今日B級2組昇級決めるか 勝てば確定、負けても可能性/将棋・順位戦C級1組 https://t.co/7zHgjM3y60#藤井聡太 #高野秀行
――それで奥様から聞いたのですが、なんでもベルトを忘れていったらしいですね。
高野 いろいろ考えることがありすぎて、全然気づきませんでした。
――大阪でも買えそうなものですけどね。
高野 夜の7時には大阪に着いていたので、その頃ならば、どうとでもなったんです。ただ気づいたのが、ホテルの大浴場に入った後、夜の10時頃で。コンビニ? とか思ったんですが。
――コンビニでベルト売ってないですよね(笑)。
高野 ですよね。それでベストで隠すことにしたんです。