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「棋士らしく読みの入った麻雀を打ちたい」麻雀最強位の“勝負強さ”の秘訣とは

「棋士らしく読みの入った麻雀を打ちたい」麻雀最強位の“勝負強さ”の秘訣とは

鈴木大介九段インタビュー #2

2020/02/21
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ツモ切りまでの動作が0コンマ数秒だけ早くなる

――雀士の桜井章一さんが設立した「雀鬼会」に入っていたそうですね。

鈴木 最近、桜井会長から励ましの電話をいただいて、久しぶりにお話しさせていただきました。「若手の雀士の中では、鈴木くんが頭一つ抜けていて、すばしっこい麻雀を打っていた」といわれてうれしかったですね。

――麻雀最強戦に向けて練習したのでしょうか。

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鈴木 練習はほとんどできませんでしたが、雀鬼会の教えを守って、事前に素振りをし、半身に構えて打ちました。あとは将棋と同じで、勝負をしている最中は丹田に力を入れて、自分の芯を作ります。これが勝つコツです。麻雀プロでもできていなくて、集中力が涸れる人はけっこう多い印象を受けました。

 

――雀鬼流は独自の制限があるといわれますね。そういう縛りを設けて打っていたのでしょうか。

鈴木 雀鬼会はそちらがよく注目されますけど、姿勢のほうが大事です。半身の構えで集中力を切らさないのは日ごろの鍛錬からくるものです。真正面を向くと、ほかの人の動作が見づらいんですよ。あと、自分の利き腕を前に出すほうが、ツモって切るまでの動作が0コンマ数秒だけ早くなります。わずかな時間でも、相手の所作を見る貴重な時間です。それは見損ねたら永遠に入ってこない情報なんです。

読みに自信を持って、遂行する胆力

――ほかにどのようなことを大事にしていますか。

鈴木 あとは自分の読みを信じることです。プロだと、だいたいの人は読めているけど、当たる確率が少し高い牌を引いたときに降りることがあります。でも、自分は自信があったら、自分の読みと心中するわけです。読みが外れて放銃して負けても実力なので納得がいきますけど、読めていたのに嫌だから止めることはないですね。これは将棋で培ったものです。

――将棋も相手だけでなく、自分との戦いなのですね。

鈴木 将棋は最後に相手の玉を詰ます局面でプロとアマの差が出ます。アマチュアの方で相手の詰みがわかっても、詰ませられない人がたくさんいます。なぜなら怖いからです。

 棋士も詰ますときは何回も読み返しますけど、「これだけ読んだのに自分の読みが外れていたら棋士を辞める」という覚悟で最後に詰ましにいくわけです。プロ棋士は詰むと思った5手詰を詰まし損ねることはないはずです。そうした経験は麻雀に生きています。読みに自信を持って、遂行する胆力というか。

 将棋界は勝負の鬼が多いですね。子どものころから勝負慣れしている人が多いです。勝負のプロなんです。麻雀プロで自分よりも強い人はいっぱいいると思うんですけども、それでも、本当に自分の読みを信じてやれているのかな、読み切っているのかなっていう点はクエスチョンマークのときはありますね。

 

――将棋界には、麻雀好きの棋士が多いとよく聞きます。棋界の最強位として対抗馬になるのはどなたでしょうか。

鈴木 そうですね、名乗りを上げる人はたくさんいると思いますが、一人あげるとすれば広瀬くん(章人八段)でしょうか。そんなことをいうと、阿久津くんには怒られるかな(笑)。

写真=今井知佑/文藝春秋

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