「スマホだけの契約」が存在しないという矛盾
もちろん、課題もある。
機能面でいえば、番組検索に「あいまい検索」がないのはちょっと不便だと思う。番組名や芸能人の名前などで検索する際、正確な表記でないと結果に出てこない。すでに技術的に難しいものではないので、あいまい検索への対応は必要だろう。
そしてもうひとつ、大きな課題は「見れない番組」への対応だ。制作や出演の契約時にネット配信のことを組み込んでいなかった場合、許諾が得られていないので、NHKプラスでは配信できない。実際、以下のような画像が流れて配信できていない番組もそれなりにある。この辺はしょうがないことだ。過去の番組の場合、対応を進めるにも手続きコスト的な限界もある。おそらく、今後放送される番組での対応を進め、「いつの間にか多くの番組が視聴可能になっている」という態勢にするしかない。
ID登録は面倒で若干複雑だ。PCやスマホになれている人には、まったくなんということもない作業だが、不慣れな人は戸惑うかもしれない。YouTubeやAbemaTVの利用者が多いのは、「なにもしなくてもとりあえず見られる」ことにあり、そういう意味では若干のハードルがある。
とはいえ、NHKが受信料という仕組みで動いており、支払った人とそうでない人の間で公平性を担保するには、このくらいの仕組みが必要になる。完全にアクセスを排除しない「メッセージを出してリアルタイム視聴は排除しない」というバランスはいい落とし所だ。
料金施策の問題はまだ残る。冒頭で述べたように、そもそも「テレビ放送の付帯サービス」という建て付けなので、ほんとうにスマホしか持っていない人は視聴できない。ネットだけ、という料金施策は用意されていない。「テレビ放送の補完」なので、スマホ・PCには対応しても、スマートテレビには対応しない。その辺に矛盾が存在するのだが、そこは「NHK自体のガバナンスと経営施策のありよう」そのものを変えないと、どうしようもない。
これから5Gに向けて、日本でも携帯電話のデータ通信単価は下がり始める。正確にいえば、低価格プランをのぞくと「使い放題に近い料金」が主軸になる。この時期にNHKプラスのようなサービスが出てくるのは悪いことではない。
ではいつ、この矛盾を解決するのか? そのまましばらく行くのか? この辺の雲行きの不透明さが、NHKプラスの最大の課題、といえるかもしれない。