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海外で学んだ「少しのスペースさえあればサウナは十分楽しめる」

 そんな生活の中で、唯一の楽しみが2002年から始まった日本サウナ・スパ協会主催の海外研修だった。数年に一度のこのツアーに参加する度に感動し、固定概念が覆されていったと加川は言う。

「最初はたしか、2002年か3年にドイツを中心とした周りの数か国に行ったんです。これがすごく衝撃的で。ドイツは立派な施設が多くて、サウナゾーンもすごいんです。そこで体験して取り入れたのが、ガッシングシャワー。あれは独断で強引にやったんですよ。元打たせ湯だったんですけど、天井に穴をくり抜いて作ったんです。今でこそお客様に楽しんでいただいていますが、実は最初はそんなに反響はなかったんですよね……」

 個人の強い思いとは、いつも少し空回りするものなのかもしれない。

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ひとたび綱を引けば中世ヨーロッパに一気にタイムトリップ

「フィンランドとかリトアニアとかに行くと、農家の人が普通にサウナを持っていたり。大きさや新しさとかに関係なく少しのスペースさえあればサウナは十分楽しめるというか、むしろ素晴らしい体験ができたりする。それで施設が古くても、良いサービスを提供すればいいんだって気づいたんです」

施設内の階段には、加川社長渾身の北欧をはじめとする各国のサウナレポート。サウナスパ協会の仲間たちとの懐かしい想い出だという
欧州サウナ研修の1コマ。「サ道」原作者・タナカカツキ氏、ウェルビー米田行孝氏の姿も

名物・テントサウナの誕生

 海外視察を通じ、少しずつサウナ経営に前向きなっていた加川の原動力はこれだけではなかった。もう一つの大切なもの、それはサウナ業界の同年代の仲間達だった。

「スカイスパYOKOHAMAの金憲碩社長、ウェルビーの米田行孝社長、神戸サウナ&スパの米田篤史社長。海外で得た素晴らしい経験をすぐにサウナに取り入れる彼らのサウナへの情熱と飽くなき探求心を目のあたりにして、並々ならぬ刺激を受けました。僕もやらなきゃって」

 今や、太古の湯 by グリーンサウナの名物となっているテントサウナもそんな刺激から生まれたものだった。

「テントサウナは私が感じていた、“立派な施設じゃなくても素晴らしい体験ができる“というのを見事に体現しているんです。コンパクトな空間なんだけれども、薪が熱源で、目の前でロウリュができて。これは面白いし独自性もある。これならうちの露天スペースでもできるんじゃないかって」

「立派な施設じゃなくても素晴らしい体験ができる」加川の指針ともなった、名物のテントサウナ。セルフロウリュで超アツアツに! 一般の施設で薪サウナが味わえるのは贅沢だ