4月1日、2019年度の将棋界で活躍した棋士を表彰する、第47回将棋大賞が発表された。MVPにあたる最優秀棋士賞をはじめとして、各部門の受賞者と共に、昨年度の将棋界を振り返ってみたい。

選考委員会では7対6という僅差で……

【最優秀棋士賞】 渡辺明三冠(第40回以来、2回目)

【優秀棋士賞】 豊島将之竜王・名人(初)

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 最優秀棋士賞は下馬評でもこの両者の一騎打ちになるのではという見方が多数派だったが、果たしてそうなり、選考委員会の投票でも7対6という僅差で、渡辺の最優秀棋士賞が決まった。奇しくも前回は豊島7、渡辺6という結果で豊島が最優秀棋士賞、渡辺が優秀棋士賞を受賞している。

 両者の2019年度を振り返ると、渡辺は最多冠の三冠(棋王・王将・棋聖)を確保し、JT杯で優勝。そして順位戦A級では全勝で名人挑戦を決めている。対して豊島は4つのタイトル戦に出場したが、これは2019年度における最多出場回数となる。そして竜王・名人の大二冠を確保し、銀河戦優勝。叡王戦でも挑戦を決めており、まさしく甲乙つけがたい成績だ。投票結果が真っ二つになるのも無理はないが、棋聖戦五番勝負における直接対決の結果が左右したか。

2020年2月6日に行われた、渡辺明三冠と豊島将之竜王・名人による叡王戦挑戦者決定戦第1局 
©︎相崎修司

 渡辺は最優秀棋士賞について、自身のブログで以下のように振り返っている。

〈1年前は2冠、という状態でしたが、3冠+名人挑戦権に持ってこれたので、成功と言える年度だったと思います。ただ、1年後はどうなっているのか分からないのが勝負の世界の厳しいところなので、持続できるように考えて取り組んでいきたいです〉

 そして間もなく始まろうとしている名人戦七番勝負も、この両者による対決だ。時勢を鑑みて、先日延期が発表されたが、新たな最優秀棋士賞の行方を占うであろう大勝負が無事に実現されることを祈りたい。

「中年の星」と多くのファンに勇気を与えた

【特別賞】 木村一基王位(初)

【敢闘賞】 永瀬拓矢二冠(初)

 永瀬の敢闘賞は当然の表彰だろう。タイトル戦出場回数という視点では渡辺と豊島に一歩譲るが、叡王戦と王座戦という2つの舞台で見事な結果を出した。年度末においての二冠保持者ならば、最優秀棋士賞の候補に挙がってもおかしくはないが、今回はちょっと相手が悪かったか。間もなく始まる叡王戦が自身初の防衛戦となるが、そこで弾みをつけて、今年度は更なる上を目指したい。

 特別賞は常に表彰されるものではなく、最近では藤井聡太七段の記録四部門制覇など、よほどのことがない限り授賞されない。将棋大賞史上、20回目となる特別賞を受賞した木村は、46歳にして初タイトルを獲得し、「中年の星」と多くのファンに勇気を与えたことが表彰につながったのではないだろうか。