1ページ目から読む
2/4ページ目

史上初めて初参加でタイトル戦出場を果たした

【新人賞】 本田奎五段

 若手棋戦を制した棋士に贈られることが多い新人賞だが、今回受賞の本田は何といっても「史上初めて初参加でタイトル戦出場を果たした」棋王戦での活躍によるところが大きいだろう。そして年度対局数では3位(58局)、年度勝数では7位(37勝)を記録しており、棋王戦のみならず、各棋戦で結果を出したともいえる。「タイトル戦に出ると香一枚強くなる」と言ったのは佐藤康光九段だが、その言葉通り新年度では香一枚強くなった姿を見せられるか。

【最多対局賞】 佐々木大地五段 67対局(初)

ADVERTISEMENT

 前々回の5位(56局)、前回の2位(59局)から、着々と順位を上げて、今回は満を持しての受賞ともなった。公式戦のほとんどがトーナメント戦(=負けたら次の対局ができない)である将棋界において、対局数の多さは活躍のバロメーターと言える。とはいえ、棋王戦では挑戦者決定戦で本田に敗れ大舞台への登場を惜しくも逃し、またC級2組順位戦では次点に泣いたことから、本人にとっては不完全燃焼の1年だったかもしれない。年度末の師匠の活躍(深浦康市九段のNHK杯戦優勝)を励みに、更なる飛躍を目指したい。

2020年3月17日の王位戦リーグ、鈴木大介九段ー佐々木大地五段戦。佐々木五段にとっては2019年度66局目となった ©︎相崎修司

3年連続勝率8割は将棋界史上初の快挙

【最多勝利賞】 藤井聡太七段 53勝(第45回以来、2回目)

【勝率1位賞】 藤井聡太七段 53勝12敗 0.815(3年連続3回目)

 今更言うまでもない藤井の活躍だが、相変わらずよく勝っている。3年連続勝率8割は将棋界史上初の快挙である。そして今年度は羽生善治九段が1986~89年度に達成して以来となる、4期連続勝率1位を目指すことになる。段々とクラスが上がっている(=相手が強くなる)にもかかわらず、高勝率を維持していることには脱帽するしかない。

3年連続となる勝率8割を達成した藤井聡太七段 ©︎文藝春秋

 昨年度、あと1勝で涙を呑んだタイトル戦出場への期待もかかる。新年度の開幕戦となった竜王戦では千田翔太七段を破り、3組決勝進出を決めた。決勝で本戦入りを争うのは奇しくも師匠の杉本昌隆八段である

【連勝賞】 永瀬拓矢二冠 15連勝 2019/2/22~2019/4/23(第39、41回以来、3回目)

 連勝記録は年度替わりに持ち越しとなった場合、新年度が対象となる。昨年、永瀬が記録した15連勝だが、その中には叡王戦挑戦者決定戦第3局や同七番勝負第1、2局といった、自身の初タイトルにつながる大きな勝利があった。ちなみに永瀬の連勝が止まったのは棋王戦で、その相手は本田である。

永瀬拓矢二冠の15連勝目となった2019年4月23日の竜王戦、対羽生善治九段戦 ©︎相崎修司

【最優秀女流棋士賞】 里見香奈女流四冠(5年連続10回目)

 女流三冠を持つ西山朋佳は女流棋士ではなく奨励会員なので、賞の対象とはならない。そうなると女流四冠をもつ里見以外に、受賞者は考えられないだろう。年度後半では2つ失冠するなど西山に名をなさしめた感はあるが、新棋戦の清麗戦でも他の女流棋士を圧倒し、史上初となる女流六冠を達成。当然すぎる結果と言える。

 里見の連続受賞が途切れたのは自身の体調不良による休場中の時なので、それがなかったらどうなっていたのか。本部門の最多受賞記録は清水市代女流七段の13回(女流棋士賞の時代を含む)だが、偉大な先輩の数字を超えられるだろうか。