【優秀女流棋士賞】 伊藤沙恵女流三段(第45回以来、2回目)
【女流最多対局賞】 伊藤沙恵女流三段 46局(3年連続3回目)
2019年度の女流棋界において、里見と西山以外にタイトル戦番勝負を戦ったのは甲斐智美女流五段、渡部愛女流三段、伊藤沙恵女流三段、室谷由紀女流三段の4名。この4名の中から表彰となれば、女流最多対局賞も獲得した伊藤が優秀女流棋士賞を受賞するのが順当だろう。対局数だけでなく、勝数も第1位(36勝)であり、勝率でも第2位(0.783。1位は加藤桃子女流三段の24勝6敗、0.800)と各部門で上位につけている。
新年度の伊藤にかけられる期待はタイトル獲得だ。現在は序列1位の清麗戦でベスト4入りを果たし、奪取へのチャンスを虎視眈々とうかがう情勢にある。
「将棋はすごくいいもので、学んで悪いことは何一つない」
【東京将棋記者会賞】 高橋和女流三段
盤上で出した実績のみならず、普及方面なども含め、様々な分野で長年にわたり棋界へ貢献した棋士に贈られる賞といえるが、女流棋士の受賞は蛸島彰子女流六段、関根紀代子女流六段、谷川治恵女流五段に続く4例目となる。
高橋は現在、吉祥寺にて将棋スペース「将棋の森」を開いており、女性や子供に向けた普及活動を行っている。長年にわたって行ってきた普及活動が評価されての受賞となった。
高橋女流三段は「受賞の第一報を知らされた時は、『私でいいのか』という思いもありましたが、私がというよりは、私が教えている方々を評価していただいての受賞ということはうれしく思います」とコメント。
そして今後の活動について「この受賞で、今までやってきたことが今後につながると自信になりました。将棋はすごくいいもので、学んで悪いことは何一つないと思っています。従来の将棋教室は『もともと将棋を知っている方々を強くする』という形式が多かったと思いますが『まったく知らない方にゼロから教える』という分野はまだまだ未知数で、大きな可能性があると思っています」と語った。
将棋ソフトの発展により改めてその優秀性が再認識された
【升田幸三賞】 elmo(エルモ囲い)
【升田幸三賞特別賞】 脇謙二八段(脇システム)
エルモ囲いは玉の囲い方のひとつで、対振り飛車戦に有効とされている。将棋ソフトのelmoがよく採用することからこの名がついたが、プロ公式戦でも多用され、その優秀性が評価されての受賞となった。将棋ソフトが同賞を受賞したのは史上初の出来事である。
タイトル戦では2019年1月の第68期王将戦第2局、▲久保利明王将―△渡辺明棋王(段位は当時)で、渡辺が採用した。
また、脇システムは相矢倉における一戦法だが、特に脇謙二八段が多用したからこのように呼ばれることになった。ここ数年、将棋ソフトの発展による序盤戦術の進展もあり、改めてその優秀性が再認識されている。2020年3月の第69期王将戦第5局でも出現した形だ。