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雅子皇后、笑顔と涙の1年間――取材してわかった「雅子さまらしさ」とは

2020/04/12
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感極まってハンカチで涙を

 そして翌日の11月10日に行われた、陛下の即位を祝うパレード「祝賀御列の儀」。都内の沿道には、平成時のパレードよりも約2000人多い、12万人近くの人たちが待機していた。

 午後3時過ぎ、両陛下を乗せたオープンカーが近付くと、沿道からは波がうねるような歓声が湧き上がっていた。

 雅子さまは、白い手袋を嵌めて、笑顔で手を振られていたが、時折、そっと目頭を拭われる場面があった。

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 皇太子妃時代に続いた批判から、「自分は人気がない」と思われていたというが、今では前夜から沿道に並んで待ってくれている人たちの姿を見るたび、有難いと心から思うそうだ。

 さらに報道のカメラが入っていない場所でも雅子さまは感極まって、ハンカチで涙を拭われるという姿も見られた。その様子に気付いた陛下は、労うようにそっと言葉を掛けられていた。雅子さまは頷きながら、気持ちを締めるようにすぐに前を向かれた。

 両陛下は同月、三重訪問で伊勢神宮、奈良・京都訪問で神武、孝明、明治天皇陵を参拝されて、一連の即位関連の儀式が終わったことを報告された。この頃になると、雅子さまにお疲れが見える日もあり、参拝の際に足元がふらつかれることもあった。しかし最後の京都御所で催された茶会まで、雅子さまは無事にご公務を務め上げられた。

「即位後朝見の儀」における両陛下 宮内庁提供

「雅子さまは私たちが話をしやすいように質問して下さいました」

 そして即位後の両陛下が心に留めておられたのが、東日本に甚大な被害をもたらした台風19号による被災地への慰問だった。年末から正月までの最もお忙しい行事を迎えられる前とあって、スケジュールを組み込むことは難しかった。だが、「年内のどこでもいいので、入れて欲しい」という陛下の強い思いから実現した。

 被災地訪問には皇室内での順番がある。皇太子時代はお気持ちがあっても、陛下(上皇)のスケジュールが決まらないと行くことができず、遅くなるときもあった。しかし、陛下となった今では、柔軟にスケジュールに組み込むことができるようになった。

 12月26日、両陛下は自衛隊のヘリコプターで、宮城県と福島県に降り立った。被災地での両陛下は、関係者からの説明と現場の地理を照らし合わせて、何度も見まわすように被災状況を確認されていた。

 仮設住宅では、被災された人たちの話に耳を傾けられていた。実際に雅子さまと会話をした人たちは、

「雅子さまは私たちが話をしやすいように質問して下さいました。聞いた言葉を流さないのが印象的で、ご性格が表れているように感じました」と口々に語った。