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「淫靡な街」から、「クリーンな街」への移行

 何度も繰り返しているように、コンチママが新宿二丁目に拠点を定めてから、すでに半世紀以上もの年月が流れた。スタッフたちの意識が変わり、LGBT運動の高まりによって、世間の人々の見る目も変わった。

 時代の移り変わりのなかで、ママの目にこの街の変遷はどのように映っているのか?

「むかしの新宿二丁目は淫靡な街でした。私ももう、いい年になったからなのかもしれないけれど、あの頃の淫靡さがとても懐かしく思い出されます。あの頃は本当に楽しかったんですよ。いまの40代くらいの人になるともう、あの頃の淫靡さはわからないかもしれない。だって、ショーだって、もっと過激だったんですから……」

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 そのむかし、「白い部屋」で行われていたショーでは、チューブに入れたカレーを、あらかじめパンツのなかに仕込んでおいて、お客の前で尻からカレーをひり出し、それをかりんとうにつけて食べさせていたという。

「……それはあまりにも下品だったかもしれないけれど……(笑)、ああいうことを面白がってくれるお客さまばかりでしたよ。でも、たとえばいま同じようなことをやってもウケないでしょうね。むかしはシャレで済んでいたことでも、いまでは『あれはダメだ、これはダメだ』って言われちゃうでしょうから」

 コンプライアンス至上主義とも言うべき現在では、信じられないようなエピソードを口にしながら、コンチママはケラケラと笑った。

新宿二丁目で《メンズ・オンリー》の店が減った

 かつて、「ゲイと言えば新宿二丁目」ということに誰も異論を挟む者などいなかった。しかし、最近ではその勢力図争いにも異変が起きているという。

「もう、マニアックなものを求める人たちは新宿二丁目には来ません。いまではみんな浅草に行きますから。たとえば、この街にいるのは若者を中心にせいぜい40代くらいまででしょ? 50代より上の世代の姿を見ますか? 全然いないでしょ?」

写真提供/白い部屋

 確かにコンチママの言う通り、近年の新宿二丁目には若者と外国人観光客の姿ばかりが目立つようになった。50代より上の世代は浅草に移行してしまったのか?

「そうです、多くの人が浅草に移っています。あの街のある一角には、いまだに《メンズ・オンリー》の店ばかりで、女性客は受けつけない店が多いし、まだ外国人観光客もいませんからね。私の感覚だと、いまの新宿二丁目で《メンズ・オンリー》の店はせいぜい3割程度じゃないかしら? それ以外はミックスバーだったり、観光バーだったり。それがいまの新宿二丁目ですよね」

 例えば、タレントの一ノ瀬文香が経営する「香まり」は「店の敷居を下げるために」という意図もあってミックスバーとしてオープンし、多くの若い客でにぎわっている。

 一方、コンチママの「白い部屋」は価格設定のちがいもあって、50代以上の年配客が中心となっている。