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経営難に陥る新宿二丁目のバーは少なくない……「男性限定」の店が減り、何が起きたか

『生と性が交錯する街 新宿二丁目』 #2

2020/04/19

 ゲイを中心に、レズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダー、いわゆるLGBTの人々が夜な夜な集り、思い思いのひと時を過ごす。そんな「新宿二丁目」の様相が変わりつつあるという。あらゆる多様性が許容される淫靡な街に、いったいどのような変化が訪れているのか?

 街とともに人生を歩み続ける男女の言葉から、新宿二丁目のこれまでとこれからに迫った『生と性が交錯する街 新宿二丁目』(角川新書)から、50年以上も営業を続ける老舗ニューハーフクラブ『白い部屋』のコンチママが語った、二丁目への思いを紹介する。

◇ ◇ ◇

ママ自身も「さまざまな呼称で呼ばれてきた」

 かつてコンチママは、「性転換をしたスタッフはクビにする」と考えていた。

 以前はハッキリと「性転換をしたらクビだ」とスタッフたちに厳命していた。

 つまり、「ゲイ」はよくても、「ニューハーフ」は認めていなかったのだ。

 ここであらためて、「ゲイ」と「ホモ」と「オカマ」と「ニューハーフ」のちがいを整理したい。コンチママによる答えは実にシンプルだった。

「むかしはみんな、《オカマ》ってひとくくりで呼ばれていましたよね。でも、LGBT運動の成果によって、最近では《ゲイ》って呼ばれるようになって、《ホモ》はあまり使わない方がいい言葉になってきた。あとはテレビの影響で、《ニューハーフ》って呼び方が一般にも広まりましたね。《ニューハーフ》っていうのは、手術によって外見を女性にした男性同性愛者のこと。最近はとても増えていますよね、《ニューハーフ》が。うちの店でもかなり多いですから」

©iStock.com

 コンチママ自身も、上京以来さまざまな呼称で呼ばれてきた。

「私が上京してきた頃、見た目が女っぽかったから、《オカマ》とはよく言われましたね。もう腹は決まっていたから、なんと呼ばれようとまったく気にしませんでしたけどね。……あっ、あの当時は《シスターボーイ》って言われることの方が多かったかな? 丸山(美輪)明宏さんとか、ピーターとかが注目されていた頃ね。それから、《オカマ》になって、最近では《ゲイ》か……。いろいろと変わっていますよね」

 あらためて、本題に戻したい。

 どうして、「性転換をしたらクビ」なのか? コンチママの見解を聞こう。

何人ものスタッフとの悲しい別離

「普通の方にはわからないと思うけれど、身体にメスを入れることでホルモンバランスが崩れるんです。シリコンやジェルなど、身体に異物を入れることがいいとは思わないけれど、まだおっぱいぐらいならいいんです。でも、《玉》を取る、あるいは《下》を切るとなると、完全に身体のホルモンバランスが崩れちゃう。ホルモンバランスが崩れると、女性の更年期障害のように精神が不安定になる。下手したら、『フーッ』って落ち込んだときに、自殺するなんてケースもよくありましたから……」

 その瞬間、表情が大きく曇った。それ以上は多くを語らないが、半世紀ものあいだに何人ものスタッフが天に召され、悲しい別離を経験したという。

「年を取れば、誰だって病気になったり、亡くなっていったりするもの。だけど、精一杯に自分の使命をまっとうして生きて、亡くなっていってほしい。そんなことを最近は考えたりしますね……」