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連載昭和事件史

老女と次弟を殺し、末弟を精神病院送りに……犯人は“資産家御曹司の美男子”だった

「白面の殺人鬼」の論理 #1

2020/05/10
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「富士郎、省次郎、新三郎の兄弟は異状児」

 東日は「兄弟三人とも変質者」の見出しで、現在なら人権上記事にできないことを書いている。兄弟の実母は「先年、精神的欠陥で東京市外大久保脳病院に入院したことがある。その遺伝からも富士郎、省次郎、新三郎の兄弟は異状児といわれ、三名とも札幌市中央創成校に入学したが、三名とも成績悪く、感情に走りやすく、わがまま者で友達がなく、受け持ち教諭を手こずらせた。しかも、このような異状児を持つ家庭教育はすこぶる放縦であって、おまけに資産50万円もあるといわれるほどの家庭だけに、物質的に豊かであった点などがわざわいされていた」と。

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 父親にも疑惑の目が向けられた。「(谷口捨次郎)博士は事情を 知つ(っ)てゐ(い)た? その奇怪なる態度」(4月26日付東日朝刊見出し)と矛先が向かう。「倅の大罪を知つて知らぬ顔? 後妻の手前隠した捨次郎氏 警視庁追窮に努む」(4月27日付読売夕刊見出し)。遂には札幌で警視庁捜査員の事情聴取を受ける。「新三郎の入院に 博士弁明できず 谷口氏を六時間調ぶ」と4月28日付東日朝刊は伝えた。「同博士は富士郎の犯行を知り尽くしていたものらしく、すっかり恐れ入り」とある。その後、捨次郎は警視庁に任意出頭して取り調べを受けたが、不問に付される。

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