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「出産場所を確保できない」「密室育児で孤立」 コロナで苦悩する母親たち

2020/05/16
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必要なものがすぐに手に入らない

 今、まさに幼児の子育てに追われているのが、2月に地元・神奈川県で出産した保田加奈子さん(仮名)。現在は都内の自宅に戻って初めての子育てに奮闘している真っ最中だ。

「実は出産自体には、ほとんど影響なかったんです。ちょうどテレビではダイヤモンド・プリンセス号のニュースを毎日のようにやっていた頃で、病院の中は消毒やマスクなど目に見えて厳しくなっていましたけど、私は通常分娩で済みました。影響を実感したのは出産後にようやく出歩けるようになってから。ドラッグストアに行ったらお尻ふきがひとつも売っていなかった。『一家族様一点限り』の貼り紙を見て、はじめて世の中が大変なことになっていることに気が付きました」(保田さん)

※写真はイメージです ©iStock.com

 乳幼児を抱える家庭にとって、切実なのは、必要なものがすぐ手に入らなくなっていること。3月にマスク不足が問題化した時期には、同時におしりふき用のガーゼも消えてしまっていた。

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「ほとんど外出はしないで自宅にこもっているので、買い物の時のマスクは何回か使ってしのぎました。体温計は出産前に用意していたので大丈夫でしたが、知り合いのママさんは出産のドタバタでなくしてしまったそうで、『もうどこにも売ってない』と困っていましたね」(保田さん)

 子育てをしていると、どうしても今すぐに必要なものが出てくるものだが、今は気軽に買い物に出ること自体が難しい。ネットスーパーを利用する手もあるが、店によっては決まった枠の争奪戦になってしまい、思うように使えないケースもあるという。

※写真はイメージです ©iStock.com

「だいたいの品物はネット通販などで手に入れることはできるんです。でも、これから成長していくうえでは、やっぱりベビー服なんかはサイズもありますし、タオルのような直接肌に触れるものは、実際に手に取ってみないと肌触りなんかは分かりませんよね。知育玩具や絵本なども、詳しい店員さんに相談しながら考えたかったんですが……」(保田さん)

 もうすぐ3カ月になるため、検診や予防接種も始まる予定だが、医療機関が混乱しているためか、通知はまだ届いていないという。

「いろんなスケジュールが少しずつ後ろ倒しになってしまうのかなと、心配しています。私の地域では、通常は保健所で検診を行っていたんですが、この状況なので保健所での開催ができなくなって、各々が指定された病院で受けるようにとだけHPに出ていました。詳しいことがわかるまでは不安です」(保田さん)