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連載完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件

「逃げようとしたら捕まえて電気を通す」監禁被害者は、逮捕後も犯人に脅えていた

完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件 #9

2020/06/02

genre : ニュース, 社会

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再逮捕は「詐欺容疑」、再々逮捕は……?

 逮捕から1カ月を経た4月7日になっても、松永と緒方の様子に変化はなかった。捜査本部はすでに長期戦となることを予期しており、再々逮捕の容疑としては、4日の再逮捕の被害者である裕子さんに対する詐欺容疑が有力とされた。ある捜査員は県警担当記者に対して語っている。

「詐欺容疑は問題なさそうだ。(監禁致傷とは)容疑がまったく異なるし、暴行や脅迫容疑だったらダメかもしれないが、詐欺だからね。被害額は最終的に200万円くらいまで裏付けできそうだ。女性(裕子さん)が松永と出会って、離婚して、監禁虐待される前までにわたって、結婚準備金名目で騙し取られたということ」

 ただし、勾留期限の“満期”が迫る4月20日を過ぎた時点で、ふたりの再々逮捕については、4日の再逮捕容疑についての起訴よりも後という情報が流れた。さらに、その直後にはゴールデンウイークが控えているため、再々逮捕は早くともゴールデンウイークが明けてからになる見通しであるとされた。

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©iStock.com

4月25日、監禁致傷で起訴

 松永と緒方が起訴されたのは4月25日のこと。起訴状に書かれていた公訴事実についての文面は以下の通りだ。

〈被告人両名は、原武裕子(当時36歳)を監禁しようと企て、共謀の上、平成8年12月30日ころ、北九州市小倉南区××所在のアパート××号室において、同女をして同室内四畳半和室に入室させ、その出入口扉に南京錠で施錠した上、引き続き、同女に対し、同和室内での起居を強いるとともに、以後連日のように、同和室等において、電気コードの電線に装着した金属製クリップで同女の腕等を挟むなどし、差込プラグをコンセントに差し込んで同女の身体に通電させ、「逃げようとしたら捕まえて電気を通す。」などと申し向け、同8年12月30日ころから同9年3月16日午前3時ころまでの間、上記一連の暴行及び脅迫等により、同女が上記××号室から脱出することを著しく困難にして同女を不法に監禁し、その際、同日時ころ、同和室窓から室外に飛び降りて逃走しようとした同女をして、その腰部及び背部等を地面に強打させ、よって、同女に対し、入院加療約133日間を要する第1腰椎圧迫骨折及び左肺挫傷等の傷害を負わせたものである。

 

罪名及び罰条

監禁致傷 刑法第221条、第220条、第60条〉

 形式的な文書である起訴状の文面だが、深夜3時に窓から飛び降り、腰を骨折するなどの重傷を負いながらも命からがら逃げ出した女性の、切迫した様子が浮かび上がる。

「逃げようとしたら捕まえて電気を通す」監禁被害者は、逮捕後も犯人に脅えていた

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