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あのCIA文書によると、辻はラオスのエンチェン(ビエンチャン)で拉致されて、そのまま(中国)雲南省に連れて行かれたのだと思います」

人知れず亡くなった政信に祈りを捧げる日本人

 

失踪から8年が経った1969年6月28日に、辻氏は行方不明のまま法律上、死亡と見なされた(法律上の命日は1968年7月20日)。

 

 2019年3月。タイ・バンコクの日本人納骨堂では年に二回の法要が、今年も開かれ、戦争で亡くなった多くの兵士にも祈りがささげられる。

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日本から法要に参加した、僧侶の平岡和子さん。名付け親である辻氏は、大おじにあたる。

 

「皆さんの英霊・亡くなられた方や政信の霊も、粛々と法要をさせていただく場所で、私も使命としてさせていただく。政信のことに関しましては、人それぞれの事情があると思いますので、私自身はこれ以上のことは、なかなか申すことができませんけれども。ネガティブな意味で捉えられてもはっきり言って仕方がないと思います。

ですけど、やっぱりそれで終わらずに、それを乗り越えてほしいと思います。そのためにも、皆さんご成仏というのは、私の務めだと思うので、それだけはさせていただこうと思っています」(平岡さん)

辻氏は全国的には知る人も少ない“過去の人”。郷土でも偉人として扱われていない。戦犯追及を逃れ、国会議員に転じ、最後は謎の失踪と波乱の生涯を歩んだ辻氏は戦後の日本に何を思い、成し遂げようとしてきたのだろうか。