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渡部建、箕輪厚介、キッズラインの経沢香保子……成功者たちの夕暮れ

「バレなければ何をしてもいい」とやり得を目指す素敵な面々

2020/06/18
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 強がる姿勢もまた魅力だし、能力や人望に裏打ちされているものだとしても、通用するのは仲間内だけであって、世間は「あいつ、あれだけのことをやっておきながら、反省しとらんじゃないか」となってしまう。箕輪さんにも言い分はあるのは間違いないけど、時期と場所がまずかった。

箕輪厚介 ©文藝春秋

 たいしたことないかすり傷を負ったと甘く見た結果、破傷風に罹って緊急入院させられるようなものです。お陰で幻冬舎の見城徹さんがあれだけ啖呵を切って関係を繋いできたNewsPicks Bookは幻冬舎ごと箕輪厚介さんが切られてしまい、事後処理には微妙な雰囲気の編集者を据えられてしまうという事件に発展しました。

スキャンダルが起きるメカニズム

「好事魔多し」と一口に言えば簡単な話ですが、気心の知れた人たちと付き合いたいという成功者の遊び方は結局は太鼓持ちが集まってきて茶坊主選手権が発生するんですよね。結果的に、洪水警報を無視して川の中州で楽しくバーベキューをやり、気づかぬ間に増水しててみんな流されるという。

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 例えば、ベビーシッターのマッチング事業のキッズライン社も揉めていますが、社長の経沢香保子さんは創業以来、箕輪厚介さんにコンサルを頼み、楽しくウェイウェイやっていたのでしょう。が、昨年11月の男児わいせつ事件に対する対応がイマイチなので私も先に記事を書いていたものの、その後容疑者逮捕や別に発生していた事件への対応を間違えて半年間も放置した結果、現在大問題に発展してしまっているという。

 やはり、渡部建に限らずスキャンダルが起きるメカニズムというのは油断を生む成功者の傲慢や倫理観の乏しさ、欲に対して抗えない弱さと、それを助長するようなあまり良くない取り巻きによるものだと思います。群れを作り、護送船団方式で上手くいったと思ったところから、成功者は転落の道が始まっているのだと思わざるを得ません。品行方正で謙虚に生きる、と口では簡単に言えても、生きていく過程で身体にベッタリと貼り付けられたコンプレックスやどす黒い欲望を節制し、人生の最後までかすり傷なく生き抜くことのいかにむつかしいことか。

©︎iStock.com

 それでも失敗のない人生はあり得ないと考えるならば、やらかした事件について向き合って真摯に反省し、傷つけた人達に対して償いをし、人生の再起を図るさまはやっぱり見てみたいのですよ。渡部建であれ箕輪厚介であれ才能で成り上がり、才能の裏側にある欠点のおかげで辛い局面に至った。そういう人間臭さ、紆余曲折も含めて山あり谷ありの人生を彩り深く歩み続けて欲しいと願っています。

 世の中、あまり「やり得」で最後まで幸せに生きていける人は少ないのだ、という重い石を背負って。

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渡部建、箕輪厚介、キッズラインの経沢香保子……成功者たちの夕暮れ

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