Amazonの動画配信、プライムビデオには、「JUNK FILM by TOEI」というレーベルがある。
ここでは、なかなか観る機会のない「埋もれた東映作品」がまとめてピックアップされていて、「お、こんな作品も配信されているのか」と驚かされる。以前ここで取り上げた「極道」シリーズも、このレーベルからの配信だった。
それだけに、リストを眺めているだけで楽しかったりもするのだが、中に「これはぜひとも紹介しておかないと」と思う作品があった。
それが、今回取り上げる『女郎蜘蛛』だ。
東映Vシネマをはじめオリジナルビデオ作品が賑やかだった一九九〇年代、実は時代劇も多く作られていた。
その多くはエロティックさを売りにした作品だったが、参加するスタッフは東映や松竹で名作の現場にもたずさわってきた京都の一流どころで、低予算ながらも映像のクオリティは決してチープにはなっていなかった。中でも、この『女郎蜘蛛』はかなり健闘している作品と当時思った。
舞台となるのは、ある田舎の宿場町。金山開発を間近に控え、そこを乗っ取ろうとする隣町のヤクザ一味と、彼らから町を守ろうとする女郎屋との戦いが描かれる。
そこに、凄腕の流れ者・お蓮(大沢逸美)がやって来るところから、物語は始まる。お蓮は女郎屋側に加担し、ヤクザたちを次々と斬り伏せていった。
七〇年代に東映で残酷もの時代劇を撮っていた牧口雄二が監督しているだけに、濡れ場などはかなり濃厚だ。が、だからといってキワモノという感じはしない。ベテランとしての確かな腕と豊富なアイデアを見せてくれている。
宿場や女郎屋といったセットの数々は細部までよく作り込まれているし、ロケーションも情感豊か。衣装も一つ一つ工夫が凝らされていて、丁寧な仕事ぶりがうかがえる。また、勝野洋、西田健、六平直政といった、時代劇に慣れた役者たちが脇を固めているのも大きい。画面の隅々に至るまで「ちゃんとした時代劇を作ろう」という心意気を感じることができるのだ。
完璧なお膳立てを受け、大沢逸美も躍動。スラリとしたシルエットを活かしたダイナミックな殺陣をみせ、アクション作品としても盛り上がる。
本作が作られた一九九六年は、テレビの時代劇が退潮しつつあり、少ない作品もワンパターンの勧善懲悪ばかりになっていた。そうした中で本作に出会い、Vシネマにはまだ可能性がある――微かながら、そう思えたのだった。
そんな熱気の残照を、少しでも感じてもらいたい。