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「たくさん壊してしまったので分かりません…。」
可愛い返事がかえってきた。
あれはもしかして大師匠板谷進の……?
6月20日、竜王戦3組決勝。杉本―藤井戦、藤井は師匠との勝負でも師匠の扇子を使っていた。
その扇子を見て、杉本は胸が詰まった。
王位戦第1局の激闘が終わり、記者会見の前に少しだけ藤井と話をした。
そして最後に扇子の話になった。
――新しい扇子、揮毫は「進」ですね。あれはもしかして大師匠板谷進の……?
「ええ、まあそうです」
そしてふと藤井が持っている扇子を見ると、間違いない、杉本七段の扇子だった。
「ええずっと使っています。穴が空いているので流石に取り替えようと思っていたんですが」
と言いながら藤井は扇子を愛おしそうに信玄袋にしまった。
(【前回】「えっ、師匠に挨拶しないで帰るの?」“30歳差”藤井聡太七段vs木村一基王位の知られざる舞台裏――教授は見た を読む)