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藤井聡太七段の師匠・杉本八段が明かす“東海の師弟物語”「永瀬さんは名古屋の終電に詳しくなった(笑)」

藤井聡太七段の師匠・杉本八段が明かす“東海の師弟物語”「永瀬さんは名古屋の終電に詳しくなった(笑)」

2020/07/11
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 ただ頭ハネと行っても厳密には頭ハネじゃなかったんで(※昇級は2名で、9勝1敗4人の中では藤井が最下位だったので杉本がいなくても上がっていなかった)。「私のおかげで頭ハネじゃないんでカンベンしてよ」と言ったらうなずいていましたね。

 今季同じクラスになりましたが、また藤井と昇級争いをしたいですね。昇級したいとまではいえませんが、昇級争いはしたいなと。

――板谷先生にはどういうことを報告したいですか?

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杉本 だいぶ待ってもらいましたけど、「まず東海からタイトル挑戦は達成できました」と。若い頃は師匠の意志をついでタイトルを取りたいと思っていましたし、40代に入ったとき、立て続けに弟子がやめたりして、師弟関係の儚さもあって気持ちが萎えていたときがあったので。藤井を弟子に取ったあたりから、かなり自分自身の意識も、将棋へのやる気を取り戻しました。

棋聖戦第3局(7/9)。杉本は師匠・板谷進九段の写真を会場に持ってきていた(筆者撮影)

――先日の師弟戦はいかがでしたか?

杉本 竜王戦3組の決勝ですし、相手が藤井ですし、タイトル戦を指すつもりで和服で臨みました。次に対戦するときは間違いなく私が下座です。彼はこれからほとんどの棋戦でシードでしょうし、対戦するためにがんばります。

藤井七段に聞いた「現在の扇子は何本目くらいですか?」

棋聖戦第3局。藤井の手には扇子が ©代表撮影:日本将棋連盟

 棋聖戦の準決勝も挑戦者決定戦も、藤井は杉本昌隆「七段」の不撓不屈と揮毫した扇子を使っていた。使い込んでいるのか穴があいてボロボロだ。杉本に聞くと、「彼はなにか持って回していないと読みのリズムが狂うみたいでいつも扇子を持っています。詰将棋解答選手権では消しゴムをクルクルしていたでしょ。昔持ち駒を回していた時があって、さすがにそれはやめさせましたが。扇子はいくらでも壊していいからとたくさんあげたんですよ。もちろん八段になってからの扇子もたくさん、だけどまだ古い方の扇子を使っているんですね」。

 棋聖戦第1局終了後、控室で杉本と藤井と3人で話した。このときもあの扇子を使っていた。杉本がいくらでもあげるから新しいのにしなよと声をかけ、藤井はニコニコしている。

 その後メールで棋聖戦の将棋を問い合わせた時、扇子のことも聞いてみた。

――師匠から杉本「七段」の扇子をずっと使っているとお聞きしました。現在の扇子は何本目くらいですか。