脚本の中園ミホは丹念な取材をすることで知られており、『ハケンの品格2』でも実際に派遣社員として働く女性たちに取材し、最低でも月1ペースで飲み会を行うなどとインタビューで語っている。そうした取材の中で、13年前はセクハラやパワハラで悩んでいた派遣社員たちが結婚して子供を持って、新たな悩みに直面している実態が見えてきたそうだ。経済的な不安、育休・産休がとれない、50歳くらいになると派遣の仕事そのものがほとんどなくなる、介護問題……。令和の『ハケンの品格』ではこれらがどう描かれるのか、とても楽しみだった。
セクハラやパワハラは「時代錯誤」?
しかしふたを開けてみれば、派遣社員を取り巻く環境の変化がまったく描かれていなかったのだ。メインテーマは前シリーズと同様に派遣社員へのセクハラや酷い扱い。セクハラやパワハラをすれば処分を免れないこの時代に、「時代錯誤」「リアリティがない」という声が噴出している。
そもそも「お仕事ドラマ」への目がこの10年間で大きく変わってもいる。昨年放送された吉高由里子主演の『わたし、定時で帰ります。』(TBS系・2019年4月期)を筆頭に、お仕事ドラマは様々な世代の様々な価値観が混在、衝突する“新時代のリアリティ”が命だ。誰もが当たり前にドラマを観ていた時代と違い、今はドラマを観る人が限られているだけに、整合性やリアリティ、緻密な構成、伏線などを求める人の割合も多い。
おまけに放送されたタイミングが少々気の毒だった。ドラマ撮影中に新型コロナ感染が深刻化し、リモートワークやオンライン会議、ペーパーレスなど、働き方が否応なく変化してしまった。いま『ハケンの品格2』を観ても「古い」感じがして共感できない。
作中では「桜を見る会」が何度も連呼されるなど“今っぽさ”の演出もあるが、風刺を楽しめる余裕が視聴者にあるだろうか。「ドラマだから」「エンタメだから」でスルーできない、楽しめない空気が、今はある。
「ハケンの品格」はキャラクタードラマ
そもそも『ハケンの品格』は「お仕事ドラマ」というよりも、中園ミホが作り上げた、篠原涼子が演じる「強くブレない女・大前春子」のキャラクタードラマである。中園ミホ脚本の『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系・第1シリーズ2012年10月期)と同じ構造だ。しかし『ドクターX』よりも『ハケンの品格』のほうがもっと身近な世界が舞台であるがゆえに、リアリティのなさは致命的なのだ。
だが、キャラクタードラマであるがゆえに、ここからの巻き返しにも期待ができる。
第4話でついに「東海林」役の大泉洋が登場。「この掛け合いをずっと待ってた」「春子と東海林の掛け合いが何より楽しみ」といった声でSNSが大いに盛り上がった。くるくるパーマ頭が一人いるかいないかで、こうも視聴者に「温度差」が出るのか。前作も大泉洋や松方弘樹、加藤あいなど、わちゃわちゃした「チーム感」が楽しかった。『ハケンの品格2』はここからがスタートなのだろう。