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今期ドラマのカギは“新時代のリアリティ”「MIU」「未満」「ハケン」「家政夫のナギサ」……成功したのは?

2020/07/14
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 また、岡田健史は塚原あゆ子演出×新井順子プロデュースの『中学聖日記』(TBS系・2018年10月期)で発見された才能。そしてなにより星野源×綾野剛バディは『コウノドリ』(TBS系・第1シリーズ2015年10月期)ですでに絡んだこともあり、息はぴったりだ。

『MIU404』『アンナチュラル』『中学聖日記』『コウノドリ』……。ドラマ好きとしては、ここ最近はやはりTBSドラマに刺激される。

 多部未華子×大森南朋出演の『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)の第1話は、縛り付けられた価値観のなかで生きる女性とその苦悩が描かれた。仕事はデキるのに家事は全くダメな主人公・相原メイ(多部未華子)のもとに、妹からの誕生日プレゼントとして家政夫のナギサさん(大森南朋)がある日突然やってくる。仕事ぶりは完璧で「こんな家政夫、私も欲しい」と思う女性は多いことだろう。

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『私の家政夫ナギサさん』(TBS系・公式サイトより)

女性の社会進出で生まれた“新たな悩み”を描く

 しかし、単なる癒しドラマで終わらないのがこの作品の深いところ。実はメイの幼い頃の夢は「お母さんになること」だったが、それを母親に否定され、「男の子に負けない仕事のデキる女性になって」とある種の“呪い”をかけられている。

 一方、家事が完璧なナギサさんは「こんなに仕事ができるのに、なぜ家政夫なんかに?」とメイに聞かれ、「お母さんになりたかった」というかつての夢を明かす。そこでメイは自分のなかに「仕事が上、家事は下」「自立しなければいけない」「専業主婦なんてつまらない」という固定概念があることに気がつくのだ。

 女性の自立が促され、社会進出が進んだことで、女性の中にもこうした思い込みや縛りができてしまっているのは今の時代ならではだろう。一生懸命努力し、頑張っている人こそ、そんな新たな枷に縛り付けられていたことに気づかされる。

多部未華子 ©AFLO

TBSドラマの本気すぎるラインナップ

 本作は脚本が『おっさんずラブ』(テレビ朝日系・2018年4月期)などの徳尾浩司で、演出には『凪のお暇』(TBS系・2019年7月期)『カルテット』(TBS系・2017年1月期)などの坪井敏雄、『凪のお暇』『コウノドリ』『グッドワイフ』(TBS系・2019年1月期)などの山本剛義が名を連ねている。TBSドラマはクリエイター陣のラインナップが“本気”なのだ。

 主演の役者が誰かによってドラマを観たのは、もはや遠い昔の話。いまは役者陣の魅力だけでなく、演出による画作りや、テーマ性、オープニングの作り方、音楽など、様々な要素が幾重にも連なった“総合力”の勝負になっているのだろう。そしていかに今の時代に合った「ニオイや空気」を醸し出せるか。

 テレビドラマの平均視聴率が下がって久しいが、一部のドラマのクオリティは次のステージへと進んでいる。

今期ドラマのカギは“新時代のリアリティ”「MIU」「未満」「ハケン」「家政夫のナギサ」……成功したのは?

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