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 ジャニーズファンにも「ちゃんとドラマを観たい」層はいるし、ジャニーズにもしっかり演技ができるタレントや、芝居のために坊主にすることを厭わないタレントもいる。『未満警察』も役者たちの熱演が光るだけに、雑な作りがなんとも惜しい。

 韓国映画のオリジナル版に忠実に作っている部分が多いとはいえ、2人が双眼鏡で風呂に入る女性をのぞく場面が「性犯罪」として問題視され「炎上」もしている。このシーンにはヒッチコックの名作『裏窓』へのオマージュがあったようだが、モラルへの鈍感さは今の時代命取りになりかねない。どれだけ魅力的なアイドルを揃えても、ドラマ自体の完成度が高くなければウケない時代になっている。

定番と見せかけて意外性のあるバディ

 一方、『MIU404』で綾野剛が演じるのは軽薄な人情派、そして野性の勘頼りという、いままでの綾野のイメージとは違った意外なキャラ。一方、星野源は観察力が鋭く、他人も自分も信用していないトラウマ系キャラと、これまた意外性がある。

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綾野剛 ©文藝春秋

 第1話では、軽薄に見えた伊吹(綾野)の勘がことごとく当たり、事件解決へ導く。しかし第2話では、「自分はやって(殺して)いない」と言う逃亡犯(松下洸平)の言葉を信じる伊吹に対し、「たいていの犯人は『やっていない』と言うんだ。やってても」とドライな判断をする志摩(星野)の対立が描かれた。

 多くの視聴者は、今回も伊吹の勘が正しく、逃亡犯を冤罪から救う物語だと思っただろう。しかし、逃亡犯は実際に殺人を犯していたことが判明する。志摩はそこで「人は信じたいモノを信じる」と語り、人情派の優しさが必ずしも真実に導くわけではないという悲しい結末に至るのだ。第1話と第2話の時点で、人情派・伊吹と理性派・志摩のどちらかのスタンスがいつも正しいわけではないのだと見事に描かれていた。それぞれのキャラクター描写が深く、バディ間のやりとりにも新味があるのだ。

星野源 ©文藝春秋

“裏バディ”で幅広い視聴者をすくいあげる

 さらに巧みなのは、綾野×星野バディに加え、見た目的にもっとわかりやすい凸凹バディとして、ベテラン刑事・橋本じゅんと若手キャリア組エリート・岡田健史の“裏バディ”を用意している点だ。バディを複数セット用意することで物語に立体感をもたせ、かつ幅広い視聴者層をすくいあげる構造になっている。

 この完成度の高さは、野木亜紀子脚本×塚原あゆ子演出×新井順子プロデュースという『アンナチュラル』(TBS系・2018年1月期)チームならではだろう。第3話では『アンナチュラル』の毛利&向島刑事がゲスト出演し、2作の世界線がリンクするというファン興奮の展開もあった。