文春オンライン

今期ドラマのカギは“新時代のリアリティ”「MIU」「未満」「ハケン」「家政夫のナギサ」……成功したのは?

2020/07/14
note

 そして、いま放送中のドラマにはいまだかつてない事態が起きている。各局がドラマにW主演を立てるという“バディ被り”がすごいのだ。

各局ドラマでいまだかつてない“バディ被り”

 先述の『BG』もそうだが、コロナの影響で中断した4月期ドラマがずれ込んだこともあり、織田裕二×中島裕翔の『SUITS/スーツ2』(フジテレビ系)、玉木宏×高橋一生の『竜の道 二つの顔の復讐者』(カンテレ・フジテレビ系/7月28日~)、岡田健史×本郷奏多の『大江戸もののけ物語』(NHK/7月17日~)、波瑠×鈴木京香の『未解決の女 警視庁文書捜査官シーズン2』(テレビ朝日系/8月6日~)、山田涼介×田中圭の『キワドい2人-K2-』(TBS系/9月スタート)などなど、見事に「バディドラマ」だらけになっているのだ。

『MIU404』(TBS系・公式サイトより)

 さすがに今回は特殊ではあるが、近年バディドラマは増えてきていた。

ADVERTISEMENT

 主人公1人を軸にするよりも、凸凹キャラのコントラストが楽しめるほか、人間関係を描きやすいのだ。朝ドラでも、以前は「ヒロイン至上主義」と言われ、『おはなはん』(1966年)や『おしん』(1983年)などをはじめ、古くからヒロインがど真ん中に立つ演出が多かったが、『梅ちゃん先生』(2012年)あたりから「イケメン複数制」が定番となっている。玉木宏が夫で、ディーン・フジオカが人生に大きな影響を与える五代友厚を演じた『あさが来た』(2015年)などはその最たる例であり、タイプ違いを揃えることで、視聴者が“推し”を選択できるのだ。

 一方で“推し”の選択肢が多いのは『ごくせん』(日本テレビ・第1シリーズ2002年4月期)や『ROOKIES』(TBS系・2008年4月期)などのようなチームモノだが、1人1人のキャラを立たせるためにその背景を描く必要があり、1話完結パターンになってしまってメインのストーリーは深掘りしにくいというデメリットがある。それに比べて「バディ」なら小回りがきくうえ、主軸にどっしりとした物語を据えて深掘りすることができるのだ。

 そんな中、今回注目すべきなのはやはり中島健人×平野紫耀W主演作『未満警察 ミッドナイトランナー』(日本テレビ系)と、星野源×綾野剛W主演作『MIU404』(TBS系)だろう。人気俳優の競演で、放送前から話題を集めていた。

『未満警察 ミッドナイトランナー』(日本テレビ系・公式サイトより)

「ジャニオタって、こういうの好きなんだろ?」

 しかし『未満警察』はキラキラアイドル同士、『MIU404』は和顔&低体温の芸達者同士と、ルックス的にはどちらも凸凹感を楽しみにくい組み合わせだ。そのうえ『未満警察』ではバディの肝心要であるキャラクター設定も物足りない。意識高い系をこじらせた頭脳派の本間(中島)と、やんちゃで熱い肉体派の一ノ瀬(平野)というわかりやすい凸凹バディではあるのだが、定番すぎるキャラクター設定で意外性がないのだ。

 平野はくるくる変わる豊かな表情で惹きつけるし、中島も神経質そうな中にもどこかヌケた色気をにじませている。彼らの肉体的魅力やキュンキュン演出に盛り上がるファンも少なくないが、毎度設けられているパンツ一丁やお姫様抱っこなどのシーンは、よく言えば「ファンファースト」、悪く言えば「ジャニオタって、こういうの好きなんだろ?」的演出に見えてしまうのだ。