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連載テレビ健康診断

男の気配を絶った大森南朋に多部ちゃんが迫る『私の家政夫ナギサさん』――亀和田武「テレビ健康診断」

『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)

2020/08/11

 二十代後半の働く女性が主人公のラブ・コメ。前作『これは経費で落ちません!』の好演で、今季も多部未華子にはその年齢に即したドラマが用意された。

 ま、演技力と存在感は、十代の頃から抜群の多部ちゃんだから、どんな役でも対応できるんだけどね。

多部未華子 ©AFLO

 でも今回のドラマは作りがやや微妙。製薬会社のMR(医薬情報担当者)としてバリバリ仕事をこなす相原メイを彼女は演じる。

 仕事は出来る頑張り屋さんなんだけど、家事は一切ダメ。料理は出来ないし、掃除や整理整頓も苦手だから、部屋は散らかり放題。

 そこで“家政夫のナギサさん”登場。メイの二十八歳の誕生日の夜、帰宅すると、部屋に見知らぬ変なおじさんが現れる。家事代行サービスの会社で働く妹の唯(趣里)が、姉を案じてのサプライズ・プレゼントだ。女ひとりの部屋に、正体不明のおじさん! メイは仰天し、抵抗する。

 しかし物腰の柔かい鴫野(しぎの)ナギサ(大森南朋)は家事全般を完璧にこなすウルトラ級の家政夫だった。料理は上手だし、洗濯からアイロンかけまで手際よく、かつ丁寧にこなしてくれる。

 番宣で大森南朋を見たときは、ギョッとした。男の気配をすべて消したというか。ホワンと笑みを浮かべても掴みどころがない。どこか無気味だ。

 大森といえば、『ハゲタカ』や『龍馬伝』の武市半平太でみせた、危険な男のイメージが強い。それが真逆の役を演じている。

 でもね、メイと同じく私も、回を追うごとにナギサさんの表情や静かにボタンをつける姿に慣れてきた。

 

 そこへいくと、メイの勤める会社の同僚や上司のキャラがあまりに類型的でね。婚活ひと筋の薫(高橋メアリージュン)なんてコメディにもなってない。高橋が可哀想だよ。

 ライバル会社の優秀なMR・田所(瀬戸康史)が偶然同じマンションの隣に引っ越してきて恋の予感もとか、もう御都合主義の極みだ。

 社内の仕様もないドタバタを見せられた後、メイの部屋で気配を消して黙々と家事を代行するナギサさんを見ると、いつしか画面に集中している私だ。

「ナギサさんって、秘密主義ですよね」。自分の過去を語らないナギサさんに、メイが軽く問いかける。だけどナギサさんはすっと話をはぐらかす。

 成瀬巳喜男の映画『流れる』から、筒井康隆の七瀬シリーズ、『家政夫のミタゾノ』に至るまで、家政婦の目を通して派遣先の家の秘密が暴かれていく。

 しかしこのドラマでは、秘密を抱えているのは逆にナギサさんだ。スカスカの社内模様は脇に置き、メイがナギサさんの抱える謎や闇を解き明かすプロセスに比重を移していくべきだ。これじゃ多部ちゃんという宝の持ち腐れだ。

INFORMATION

『私の家政夫ナギサさん』
TBS系 火 22:00〜
https://www.tbs.co.jp/WATANAGI_tbs/

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