昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2020/08/08

「国際エミー賞」にもノミネート

 とはいえ、舞台は東京でも判事たちは全員外国人、良質のドラマとするためには、世界各国からの俳優のキャスティングも必要となる。それならば、制作陣の監督、撮影監督、キャスティングディレクターなども海外の才能を起用し、企画・脚本の要諦は日本側でコントロールしながら、彼らの力も使って「海外ドラマのような」画面づくりとし、「東京裁判」をテーマに、日本だけでなく世界で見られる作品として発信しようと考えた。

愛知県東浦町にある乾坤院でのロケの様子(筆者提供)

 そこからの道のりは平たんなものではなかったが、自ら海外に出かけ、この企画を売り込み、オランダとカナダの制作プロダクションを選定して、「東京裁判って何?」という知識の状況だった彼らに一から教えて、このストーリーを完成させた。海外スタッフの力は、期待通り、主としてキャスティングと高品質の映像づくりに生かされた。

 キャスティングでは、マッカーサー役のマイケル・アイアンサイドも著名なハリウッド俳優で、そのほかも各国の舞台俳優など、知名度は世界的でなくても芸達者な人選が行われており、出演料と演技力のコストパフォーマンスも最大限高いところをついていて、さすがだと思わされた。映像に関してはオランダ人の若く才能あふれる撮影監督が起用され、4Kカメラでの撮影により、極めて高品質になったと思う。

左からベルナール判事(フランス)、ハラニーリャ判事(フィリピン)、ザリヤノフ判事(ソ連)(「NHKスペシャル ドラマ東京裁判」より)

 さらに、「愛の不時着」などで今をときめくNetflixが、当時撮影開始前の段階でこの企画を高く評価し、プロジェクトへの出資の約束をしたことも大きかった。一般的に、番組が完成し放送した後にそのソフトを購入する場合と、企画段階で出資を決めるのでは、出資額も取るリスクも全く異なるのが業界の通例だ。

 そこにこの企画においてNetflixは踏み込んだ。その結果、この番組は現在も常時Netflixで日本を含め世界中にネット配信されている。海外においては、「東京裁判」の知名度はニュルンベルク裁判に比べると遥かに低く、歴史的意義においては、現在オランダ・ハーグに常設されているICC(国際刑事裁判所)にもつらなる国際戦争犯罪法廷の嚆矢として極めて重要なのに、正当な評価をまだ得ていない。そうしたことから「戦後の東京でこのような大規模な戦争裁判があったとは知らなかった。そこに焦点を当ててくれて新鮮だった」といった反響を海外の視聴者からいただくことも多い。

 そうした点も含めて、このドラマは世界最高峰のテレビコンクールの一つ、「国際エミー賞」にノミネートされるという大きな成果も得て、国際的な評価も得ることができた。