志村けんと同じ「リズムが命」という信念
芸風に音楽的な下地があるのも、小峠の大きな魅力の1つだ。そのこだわりぶりが、「キングオブコント2012」のDVDの中に収められている。
決勝の2ネタ目の出番直前、舞台裏でネタ合わせをするバイきんぐ。そこで小峠は、相方の西村瑞樹に掛け合いのリズムについて厳密な指示を出す。具体的にはこうだ。
小峠「どこよ?」
西村「はぁ?」
小峠「あ、パナマどこよ!?」
西村「いや、コスタリカの横よ」
ここで、小峠は、西村の「いや」は必要ないと指摘する。「いや」を入れることで「気持ちいいリズムの尺に入らない」と、見ている側の反応まで見据えた明確なイメージを口にしているのだ。
「コントはリズムが命」という考え方は、志村けん、伊東四朗といった喜劇のレジェンドたちとも共通するところだ。小峠は、このコントの本質を理解したうえでネタづくりしていることがわかる。
かねてより、小峠は「赤いタンバリン」「SWEET DAYS」などの代表曲を持つロックバンド、ブランキー・ジェット・シティ(1987年結成。2000年解散)の大ファンとしても知られている。
そのボーカルだった浅井健一(愛称・ベンジー)との対談(「ORICON NEWS」2016年2月15日掲載)が実現。ここで小峠は、浅井からの影響について言及している。
小峠と言えば「しゃべれねぇように声帯くりぬいてやろうか!」「圧倒的なトラウマ植え付けてやろうか!」といった過激なツッコミが特徴だが、このフレーズについて小峠は「ベンジーさんの綴るオリジナルな言葉から、刺激を受けているように思う」と語っている。
また、浅井の歌い方の特徴として独特なシャウトがあるが、この点についても「ベンジーさんのシャウトって、すごいんですよね。あの一発で、ゾクッとする」「(「なんて日だ!」を叫ぶにあたっても)やはり、本気で叫ばないと(笑いがこない)」と口にしている。小峠のワードセンスとシャウトは、浅井の音楽スタイルから影響を受けていたのだ。
昨今、楽器を弾いたり、歌をモチーフにしたりしてネタを披露する芸人は珍しくないが、音楽的要素を笑いに昇華できる芸人は極めて珍しい。この点も、小峠特有の個性と言える。