最近、腟や肛門のかゆみやムズムズ感、においに悩み、病院を訪れる女性が増えているという。週刊文春WOMAN創刊号(2019年正月号)の「更年期特集」でも、腟と泌尿器の不調をひっくるめた「GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)」への反響はかなり高かった。そこで今回は、これら腟・泌尿器に加えて、肛門の健康についてもより詳しく追究したい。実はこれらの症状は、トイレの使い方や日頃のケアを見直すことでかなり改善するのだ。
なぜ、40代からお尻ケアが重要かというと、お尻は年齢とともに外形だけでなく、内側の外陰・腟まわりも変化していくからだ。下着メーカーのワコールの研究によれば、お尻のフォルムは内側に向かって流れるように下がっていく(下図参照)。
GSMや骨盤臓器脱の治療・研究で名高い、三井記念病院産婦人科医長の中田真木氏は、「こうした体型の変化と同時に、腟・外陰部も変化し、下がってくるといえます」という。
その原因は、まず女性の40代から50代の更年期に起こる女性ホルモンの減少に関係していると考えられる。
「女性ホルモンは、皮膚にハリと弾力を与えるコラーゲンを増やす働きをしています。女性ホルモンが減少すると、顔や全身に乾燥やくすみが出るように、腟まわりでも変化が起こります。大陰唇はぽってり感がなくなり、薄くなって垂れ下がります。小陰唇は短くなり、最終的にはなくなってしまうこともある。尿道口は縦に閉じていたのが開いて円形になり、腟壁は薄く硬くなり、点状出血が起こることもあります」と説明するのは、米国のGSM事情にも詳しい女性泌尿器科医の関口由紀氏(女性医療クリニックLUNAグループ理事長)だ。
GSMという概念は、2014年に初めて米国の北米閉経学会などによって提唱された。具体的な症状は「陰部のかゆみや痛み」「泌尿器系の症状(頻尿、尿もれ、繰り返す膀胱炎)」「性交痛、それによる性的意欲の低下」の3つとされる。米国での疫学的研究では、「閉経後の女性50%に何らかのGSM症状があり、その症状はケアしないと進行していく」(関口氏)という。
「閉経関連泌尿生殖器症候群」という日本語訳は、現在、日本女性医学学会が検討中のものだ。ようするに、これまで40代以降の女性に起こる腟のかゆみや性交痛は婦人科で、尿もれは泌尿器科でとそれぞれに治療が行われてきた。もっと前には、「どれも、年だからしかたないと医療の対象ですらなかった」(関口氏)という時代もあった。しかし今後は、閉経期からの腟と生殖器の不調をひっくるめてGSMと呼び、女性のQOLをひどく下げる重大な疾患としてみていきましょうということだ。