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 一方、関口氏は、「腟・外陰部の血流の悪さと乾燥が、GSMを悪化させます」として、GSMの患者さんには骨盤底筋トレーニングと、お風呂のあとの保湿をすすめている。

「デリケートゾーンとはいっても、腟まわりは日頃から尿や血液などの体液にもさらされる場所なので、顔の皮膚よりは弱いが、腹部や腕の内側よりも強くできています。ボディに使って肌荒れしない保湿剤は、ほとんどの場合外陰部の皮膚(陰毛の生えているところ)にも使えます」(関口氏)

温水洗浄のあてすぎは危険!

 どちらにも言えるのは、治療の前にまず日々のケアが重要だということなのだ。

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 ただ「お尻を洗う」といっても、温水洗浄便座でシャワーをあてることではない。これは大きな誤解で、外陰部や腟だけでなく肛門を含め、かゆみなどの症状のあるときは、むしろトイレでの温水洗浄はしないというのが、正しいお尻のヘルスケアだ。

 このことは、各メーカーの温水洗浄便座でも「産後、術後、炎症があるときなどには使わない」といった一文が取扱説明書に明記されている。それがなぜ、守られていないのだろうか。

 女性専用の肛門外科、日本橋レディースクリニック院長の野澤真木子氏は「むしろ、かゆいからきれいにしなければと思い込み、お尻を消毒したりトイレのたびに温水洗浄を強くあてることを繰り返す。このせいで、肛門の周りに炎症を起こしている人が多いのです」という。

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 また、水流で肛門を刺激することで便を出そうとする人も増えているそうだ。こうなると、温水シャワーを当てないと便意がなく、水流も次第に強くしたくなる。かゆみを起こす皮膚炎はますますひどくなり、洗えば洗うほど悪循環が止まらない。

 これを「温水洗浄便座症候群」という専門家もいる。腟に比べて、肛門は刺激に強いと思われがちだが、「石けんでごしごし洗わない、トイレで温水洗浄の温度や水流を調整し、できれば使用を控える。この2つだけでかゆみが止まる人もいます」(野澤氏)という。

 また、今回、各医師から使いすぎがよくないという指摘があったのは、おりものや尿漏れ用のシートだ。

「特に薄型タイプは、しっかりした防水シートが入っているので腟の出口に蓋をしているようなもの。軽い尿漏れ感は本当の漏れではなく、拭き残しのことが多いので、シートをあてるよりもまずはトイレで拭き残しのないよう気を配ってほしい」(中田氏)

「おりものシートはでかけるときやスポーツ、長時間の立ち仕事のときだけにして、家の中では木綿の下着で風通しよく過ごしてほしい」(関口氏)

 肛門のかゆみにも影響する。

「月経のときだけかゆみが出るという人も多いが、ナプキンの種類を変えてみると改善することもあります」(野澤氏)