2020年8月20日はまたしても藤井聡太が将棋界に新たな足跡を残した記念の日となった。第61期王位戦七番勝負で木村一基王位を破り、先日奪取した棋聖に続いて王位を獲得した。
18歳1ヵ月での二冠達成は、史上最年少記録である。羽生善治九段が1992年9月22日に21歳11ヵ月で達成した年数を大幅に更新した。また「タイトル2期獲得」の規定により、八段昇段。こちらも史上最年少の八段となり、加藤一二三九段の18歳3ヵ月(1958年4月1日に八段昇段)という年少記録を塗り替えた。
記録についてはまったく頓着している様子がない
藤井本人は終局後のインタビューで以下のように語っている。
「対局に臨むに当たって、(年少記録は)まったく意識していなかったことではあるのですが、ヒューリック杯棋聖戦と王位戦、今年は2つのタイトル戦に出ることができて、その中で好結果を残すことができたのは収穫だったと思っています」
今回の王位戦に限らず、藤井は自身の記録についてはまったく頓着している様子がない。自らの棋力を少しでも高めるという意識があるのみだ。その結果として記録は自然とついてくるものである。
とはいえ、今後の藤井にどのような可能性があるのかというのも気になるところ。特に数字で示される記録は、盤上で藤井が見せる妙技と比べて、段違いにわかりやすいのも事実である。
本稿では特に、将棋界のレジェンドである羽生善治九段がこれまで打ち立ててきた数多くの記録と比較して、藤井にどれほど更新の可能性があるのかを見ていきたい。
「最年少三冠」から全八冠独占まで
藤井が今後タイトルをどれだけ増やしていくか。そもそも、これまで1期でもタイトルを保持した経験がある棋士は藤井を含めて45名いるが、そのうち二冠(同時に2つのタイトルを保持)を達成したのは、藤井が16人目となるので、一気に数が減る。三冠達成は9名、四冠は5名、五冠が3名。そして六冠と七冠は1人だけ。
三冠以上の最年少○冠記録は全て羽生が持っている。
最年少三冠は1993年1月6日、すでに持っていた王座と棋王に続き竜王奪取で達成。当時の羽生は22歳3ヵ月である。
そこに棋聖を加えて四冠となったのが1993年7月19日。時に羽生は22歳8ヵ月。その1ヵ月後、8月18日には王位を奪取して22歳9ヵ月での五冠王となった。
史上初の六冠王となったのは1994年12月9日で、24歳2ヵ月。そして七冠が1996年2月14日で、25歳4ヵ月である。