文春オンライン

【ポスト安倍を辛口採点 三浦瑠麗】“哲学者”岸田3.0、“一匹狼”河野2.5に対し、菅、石破が3.5の理由は?

2020/08/30

菅義偉 ★3.5 「人的ネットワークをどこまで活かせるか」

 菅さんは一言で言えば、人との関係を重視する政治家だと思います。自分が見込んだ人と直接関係を築くことがうまく、幅広い人脈を持っています。

 だから菅さんは陳情や具体的なプロジェクトに強い。石破さんなど地元に密着してきめ細やかな陳情に対応できる政治家は他にもいますが、菅さんは様々な省庁とも関わるような、大きなテーマについて、幅広い人的ネットワークを生かして政策を進めることが出来る。それゆえ、安倍さんの後継として名前が挙がってきたところがあるのでしょう。

菅義偉氏 ©文藝春秋

 また、具体的な政策を重視するのも特徴だと思います。私が印象に残ったのは、2018年に「安全保障と防衛力に関する懇談会」で菅さんと一緒に仕事をした時のこと。他のメンバーが「国家とは」「世界情勢とは」と大きな話をする中、菅さんは「サイバー攻撃に関する対処」といった、いま力を入れるべき政策は何なのかを念頭に置いて、具体的なテーマについて簡潔に話す傾向があります。

ADVERTISEMENT

 その意味で、本人も認めるようにいわゆる「総理大臣タイプ」とは少し毛色が違うのかもしれません。それでもこの際立った実務能力の高さは、国を大きく動かしていく上で重要です。プロジェクトを推進する馬力は、Go Toキャンペーンに批判が集まったときのような混乱を招くこともあります。しかし、必要だと思ったことについては「引かない」という菅さんの頑固さは重要。

 菅さんは従来から総理候補だった人ではありません。8年近くの長期政権で、国民には“安倍政権疲れ”が蔓延していますから、菅さんには刷新感が不足することは確かです。国民がどれだけついて来るのかはというのが、懸念されるポイントでしょう。