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夏の最後に食べるべき絶品「冷がけそば」‟3選”――「茹で麺」使用の昭和レトロに感じる哀愁の正体とは

2020/09/15
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亀有「鈴しげ」の冷し天ぷらそばは脳裏から離れない上質な味

「鈴しげ」は常磐線亀有駅改札の北側ロータリーから東方向へ進んだ、❝両さん❞で有名な亀有公園のすぐ前に立地している。創業は昭和50年。店はL字型でカウンターに丸椅子が並ぶ。店は明るく、たいへん綺麗である。店内はお客さんとの間をビニールで遮蔽し、エタノールを設置するなどのコロナ対策をしっかりと行って、休業することなく営業を続けているそうだ。

JR亀有駅前の両さん「コンチワ」
「鈴しげ」は亀有公園の真ん前だ
消費税増税後も値段が変わらない。すごすぎる

 ここは以前、天ぷらの名店として紹介したことがあったのだが、その天ぷらをのせた「冷し天ぷらそば」は抜群の旨さといってよい。その味が常に脳裏から離れない。そんな印象である。

「鈴しげ」の天ぷらは揚げ置きだが、抜群にうまい

 天ぷらはかき揚げ、玉ねぎ天、春菊天、ごぼう天、にんじん天、げそ天、あじ天、いか天、時にはおかひじき天、モロヘイヤ天などが並ぶ。どれも繊細かつからっと揚げられていて、揚げ姿が美しい。そしてその天ぷらを冷しでいただく。「冷し春菊天そば」(450円)、「冷しにんじん天そば」(450円)などがおすすめである。

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「冷しにんじん天そば」(430円)のにんじん天は細めに軽く揚がっている

「冷し春菊天そば」を注文すると、そばを湯通しし丁寧に水洗いして冷水にさらして、よく冷したどんぶりにそばと冷し用のつゆをかけて、春菊天を載せて登場する。春菊天は細長く刻んだかき揚げスタイル。にんじん天も細めに切ったかき揚げ風にまとめている。いずれも程よい大きさで、ほぐれ具合がなかなかよい。油切れもよく、冷たいつゆにひたして食べるとまたこれが旨い。そばは近隣の製麺所の茹で麺だが、コシもあり、冷しで食べるのにマッチしている。

「冷し春菊天そば」(430円)、油切れの良い上質な天ぷらとつゆが抜群にうまい

 そのつゆはまず昆布の出汁がじわっと、そしてかつお出汁が追いかけるように利いたタイプで上質な味である。返しは濃すぎることはなく、甘みも少ない奥行きの深いつゆである。とにかく、気が付けば食べ終わっているという感じである。「鈴しげ」では、「冷がけそば」は一年中食べることができる。うれしい限りである。