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飾らない大衆そばの傑作「なかむら」の「冷し天ぷらそば」

「なかむら」はJR南武線稲城長沼駅改札を出たすぐの北側の駅前広場で営業している、ぽつんと一軒の立ち食いそば屋だ。「なかむら」では5月の終わり頃から9月末あたりまで、夏の人気メニュー「冷し天ぷらそば」(430円)が登場する。これを食べないと夏を迎えられないし、もう一度食べないと夏を越せないくらい、印象深いメニューである。

「なかむら」はJR南武線「稲城長沼駅」の北側すぐにある

 今年は9月に入ってうかがったのだが、店はコロナ対策のビニールの仕切りが設置されていて、入店人数も制限されていた。若女将にきいたところ、コロナで1ヵ月半休業したそうで、創業以来の出来事だったという。

今年はよしずで日除けしていた。「なかむら」を久々に訪問してみた

 こちらの天ぷらは1種類。たまねぎとにんじんをやや大きめのざく切りにしてかき揚げにしたタイプで、からっと揚がっている。その姿が美しい。

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「冷し天ぷらそば」(430円)を食べずして夏を越せない

「冷し天ぷらそば」を注文すると、近隣の製麺所の茹で麺を湯通しして、水にさらしてどんぶりに入れる。それに綺麗な琥珀色の冷し用のつゆをかけまわし、天ぷらをのせ、ねぎをのせ、その上に細く刻んだ海苔をかけ、最後に白胡麻をふりかけて完成する。

簡素の中に旨さが凝縮している、海苔・胡麻・ねぎ・天ぷら・つゆ・そばの一体感

 まず、つゆをひとくち。薄口醤油を使った透き通ったタイプで、きりっと返しが利いて、出汁も十分感じられるつゆである。いつも飲み干してしまうつゆだ。そして、天ぷらを食べると玉ねぎの甘味、ごま油の香りが口いっぱいに広がる。そばはゆで麺だが、十分コシもあり、つゆ・天ぷらとのバランスがすこぶるよい。じんわりと旨さが伝わってくる。そしてまた食べに来たくなる味である。華美なものが何一つない。飾らない質素な味だが傑作的な作品だといつも感心する。「冷がけうどん」で食べてもうまいに違いない。書いていても食べたくなるそんな味だ。