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徹夜組も…カラーサージカルマスクに台湾が熱狂 火付け役に聞く誕生秘話

“マスクガチャ”と“ピンクマスク騒動”で認知度アップ

2020/09/23

genre : ライフ

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 そう、台湾で手に入るサージカルマスクは水色か薄緑色が主流だ。台湾のコロナ対策を報じるニュースなどで目にする街の人々、台湾政府から寄付されるマスクが淡い寒色系であることに気づいた人もいるのではないだろうか。

 台湾で日本のような白いマスクを探すのは、とても難しいこと。この色の問題は、マスクウォッチャーの筆者が長年抱いてきた疑問でもある。

カラーマスク登場前の通常タイプ。サージカル感がダイレクトに伝わるイラストが目を引く。長時間装着する医療現場に対応すべく、高い通気性と軽いつけ心地を追求。

「サージカルマスクは、もともとは医療機関用に作られていたもの。白でない淡い色は、血液などの汚れを目立たせるためで、これは病院からの要望によるものです。

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 また、裏側を白色にして表裏が明確に区別できる仕様は、医療用の規格のひとつでもあるんです。CSD中衛は、台湾の医療消耗品メーカーの草分けであったため、先代が作ったそのマスクの仕様が台湾のスタンダードとなり、当社もそれを作り続けてきました。

 一般消費者の使用量は、1日に何枚も取り換える医療関係者に比べると非常に少なく、少数派である一般向けにスペックを変えるのは合理的ではありません。そのため、民間で使われているマスクも、医療用と同じ、水色か薄緑色になっているというわけです」

 ちなみに、医療機関で使われるマスクや手術衣が白色でないのは、手術中に血液や内臓の赤色を見続けている医師らが、ふと視線を上げた際に白色が目に入ると、赤の補色である青緑色の残像がチラついて集中力を損なってしまう。そのため、視界に入る布物には残像が見えづらい青緑色が選ばれていると言われている。

「医療用マスクメーカーとしては大手でしたが、マーケットは頭打ち状態で、この分野での成長は見込めない。そこで医療従事者向けのマスクを一般向けに変えてみようと考え、生まれたのがカラーマスクです」

 サージカルマスクの消費者としては少数派である一般ユーザーに照準を合わせ、スペックを変え、“病院っぽくない”、しかしメーカー的には“合理的ではない”カラーマスクを作る。それが張德成營運長が目指したイノベーションだ。