──本当にあれでいいんだろうか?
帰路、雨の道央道をレンタカーでひた走りながら、そんな思いが消えなかった。この日、私が行ったのは、今年7月12日に開業したばかりのウポポイ(民族共生象徴空間)である。
ウポポイとはアイヌ語で「(大勢で)歌うこと」を意味する。北海道白老町のポロト湖畔に新設された国立アイヌ民族博物館を核とする「アイヌ文化の復興・発展の拠点」だ。
盛大にオープンした北海道の“目玉施設”
盛んにテレビCMが流れているので、名前くらいは聞いたことがある人も多いだろう。新型コロナ流行の影響で、4月のオープンが7月にズレ込んだものの、今年の北海道にとっては最大の話題のひとつである。
私は中華圏が専門のライターであり、アイヌの知識は通り一遍の範囲にとどまる。ただ、仕事柄、ウイグルやチベットといった中国の少数民族問題に直面することは多い。学生時代の専門分野の関係もあって、先住民や少数民族への興味関心は高いほうだ。
ゆえに私はウポポイを見学したかった。そこで現地に行った……のだが、その感想が大変モヤモヤしたものだったのである。
違和感の正体は追って述べたい。まずはウポポイという施設について、ざっくりと観覧レポートを書いておこう。
博物館の入場はネットで「予約×2回」
ウポポイは札幌市から自動車で片道約65分の日帰り圏内にある。現在、コロナ流行の影響もあって入場は事前予約が必須で、1200円のチケットを購入してから全体入場ゲートをくぐる。感染予防の観点からネット予約のみに切り替えたのは英断だろう。
ただし、敷地内にある国立アイヌ民族博物館でも、上記とは別途にネットで事前予約を取る必要があるのは大変ややこしい(入場自体は無料)。博物館は1時間に200人までの入場制限があり、入場者枠が学校遠足や修学旅行生でほぼ埋まってしまうことも珍しくないので注意が必要だ。
博物館の建物2階がメインの展示室だ。広いホール内はアイヌの言語(イタㇰ)・世界観(イノミ)・生活(ウレㇱパ)・歴史(ウパㇱクマ)・仕事(ネㇷ゚キ)・交流(ウコアㇷ゚カㇱ)の6パートに分かれている。各パートの日本語は「私たちのことば」「私たちの世界」と、アイヌを主語にした書き方になっている。
もっとも、巨大な建物と垢抜けたインテリアの割に、全体的に展示物も展示説明もややボリューム不足な印象だ。隣の特別展示室を含めても、情報量はそれほど多くない。