時価総額は1兆円――。韓国の人気グループBTSの所属事務所「ビッグヒットエンターテインメント」が、10月15日に韓国取引所に株式を上場し、株価はいきなり急騰。ほかのK-POPグループが所属する大手事務所を一気に引き離した。
9月に米ビルボード「ホット100」で2週連続1位を記録したことに続く快挙だが、韓国のエンターテインメント界を担う23歳から27歳のメンバー7人に持ち上がっているのが、入隊期限の迫る「兵役」をめぐる問題だ。
韓国の兵役法では、原則28歳までの入隊が求められているが、BTSで最年長のJINは1992年12月4日生まれ。今年12月で28歳となる。いま韓国社会では、彼らの兵役の免除や延期の是非をめぐって大論争になっているのだ。
K-POPは兵役特例の範囲外
韓国では兵役法によって韓国国籍の男性なら誰でも兵役の義務を遂行しなければならない。ただし、次のような場合は、兵役特例法により兵役免除を受けることができる。
1. 身体条件不適合者
2. 疾病、障害を持つ者
3. 生計困難者
4. トランスジェンダー
5. 孤児
6. メダリスト
このうち、「6. メダリスト」は、スポーツ選手のほか、美術、音楽、舞踊などの芸術分野で「国威発揚」をした人々に対する褒賞の概念だ。具体的には、五輪の銅メダル以上、アジア大会の金メダル、国際コンクールで1、2位の入賞者が該当する。この兵役特例法が制定されたのは40年以上前の1973年。すでに現在では「国威発揚」という概念は、K-POPなど大衆文化にまで拡大しているが、対応しきれていない。
「BTSメンバーが兵役免除を要求」のデマも
BTSの兵役問題をめぐっては、これまでも紆余曲折があった。
この問題が注目を浴び始めたのは、BTSのアルバムが2枚連続でビルボード・アルバム・チャートでトップを獲得し、世界的な人気が裏付けられた2018年のことだった。
当時、真っ先にBTSの兵役特例法の適用に触れたのは、野党「正しい未来党」(現・国民の力)の河泰慶(ハ・テギョン)議員だった。彼は国会の国防委員会で、次のように指摘した。
「バイオリンやピアノなどのクラシック音楽のコンクールで1位になれば兵役特例がもらえるが、大衆音楽でビルボード1位になっても兵役特例はもらえない。BTSのような大衆音楽界の世界1位は、なぜ兵役免除を受けられないのか。今の目線に合わせて(兵役特例法は)改正される必要がある」