1ページ目から読む
3/5ページ目
岡山からの失踪
それから、3カ月半。12月22日。
東京地方裁判所第104号法廷。
池袋の通り魔が姿を現わした。
犯行当時の長髪は、短く刈り揃えられ、のびた灰色のVネックセーターに、よれよれのジーンズパンツを穿いて、とぼとぼと法廷に入ってきた。面長に切れ長の目、それに痩せ細った身体からは、服装の印象といっしょになって、どこか“貧弱”という言葉を思い起こさせた。
「名前は何と言いますか?」
「造田博です」
「生年月日は?」
「昭和50年11月29日です」
「本籍は?」
「岡山県児島郡灘崎町……」
「住所は」
「同じです」
「職業は」
「無職です」
機械的に尋ねる裁判長の質問に、覇気のない声で、呟くように答えていった。