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「わしボケナスのアホ全部殺すけえのお」 1999年池袋通り魔事件犯人を死刑前に支配した“怒り”

『私が見た21の死刑判決』より#6

2020/11/14

source : 文春新書

genre : 社会, 読書

note

岡山からの失踪

 それから、3カ月半。12月22日。

 東京地方裁判所第104号法廷。

 池袋の通り魔が姿を現わした。

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 犯行当時の長髪は、短く刈り揃えられ、のびた灰色のVネックセーターに、よれよれのジーンズパンツを穿いて、とぼとぼと法廷に入ってきた。面長に切れ長の目、それに痩せ細った身体からは、服装の印象といっしょになって、どこか“貧弱”という言葉を思い起こさせた。

©iStock.com

「名前は何と言いますか?」

「造田博です」

「生年月日は?」

「昭和50年11月29日です」

「本籍は?」

「岡山県児島郡灘崎町……」

「住所は」

「同じです」

「職業は」

「無職です」

 機械的に尋ねる裁判長の質問に、覇気のない声で、呟くように答えていった。