2020年10月26日発売の週刊少年ジャンプ47号で発表された第二回『鬼滅の刃』キャラクター人気投票は、2017年に行われた第一回の総投票数26105票から、約5倍の130316票に規模が拡大した。言うまでもなく作品の大ブレイクを物語る全体の拡大である。
今回はこのキャラクター人気投票の第一回から第二回への推移を見つつ、「登場人物の誰が愛されているのか」から、『鬼滅の刃』という作品の何が愛されているのかを筆者なりに考えてみたいと思う。
なお前もって書いておくと、キャラクターの説明などには物語の内容に触れざるを得ないため、完結した漫画作品の『鬼滅の刃』、ならびに歴史的ヒットを続けている『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の内容説明、いわゆるネタバレに触れることをご容赦いただきたい。通常ならすでに1000万人が見た映画にネタバレも何もないものだが、ことこの映画にかぎっては「まだ1億1000万人も見てない人がいるじゃないか」と言われかねない規模で広がり続けているのが驚きである。
人間的な弱さを否定しない我妻善逸くん
さて、第二回の人気投票で1位に輝いたキャラクターは我妻善逸くんであった。これは第一回の結果を知らずに見ると驚く人もいるかもしれない。善逸くんは率直に言って『鬼滅の刃』の主人公側、鬼と戦う『鬼殺隊』の中で異質なメンバーである。
痛みや恐怖を乗り越え、自分の死と引き換えに鬼を殺すという鉄の規律に統制された鬼殺隊の中で、善逸くんは「痛い」「怖い」「死にたくない」という言葉を迷いなく口にする。何しろ登場まもなく「俺はな ものすごく弱いんだぜ 舐めるなよ (炭治郎に向かって)俺が結婚できるまでお前は俺を守れよな」というセリフを叫ぶ、人間的な弱さを排除していない弱者男性的キャラクターなのだ。
ある意味では鬼殺隊のノリと真逆なのだが、連載1周年、ちょうど漫画連載が「無限列車編」のあたりで行われた前回投票でも善逸くんは1位の炭治郎に次いで2位に輝いており、一貫して人気のあるキャラクターである。
どちらかというと滅私奉公的に傾きかねない作品の価値観のバランスを取り読者の共感をつなぎとめる意味がある現代っ子キャラクターだと思うのだが、登場3巻の響凱たちとの戦いが象徴するように、恐怖を捨てて超人になるのではなく、恐怖が極限に達すると失神して実力が出るという人物造形が実に魅力的なのだ。
人間時代は芽の出ない物書きだった響凱の原稿を踏まない炭治郎の優しさと合わせて、優しさや弱さを捨てない年少組コンビは、鬼殺隊でありながらその思想に縛られていない。今回一位にまでなったのには、物語後半の成長で、善逸くんへの共感に尊敬が加わった面もあるのだろう。