女性からの支持が高い理由
また『鬼滅の刃』における善逸くんの重要な点として「遺憾なくエッチな少年である」という点がある。第6巻の機能回復訓練編では、鬼殺隊の女性リハビリ担当に「女の子に触れるんだぞ」以下引用をはばかる非常に身もフタもないセクハラ発言をし、ジャンプ漫画の定型文法としてキャンという目に遭わされている。
鬼殺隊の中でも柱に比べて実力は下、泣き虫の怖がりで身長も低い善逸くんがこうも「これでもか」と男子のダメなところを全開にしたのでは女性受けが悪いのではないかと思うが、実際には善逸くんは非常に女性人気の高いキャラクターだ。二次創作などでの善逸くん推し作品も多いし、ジャンプ公式では男女別の投票率は公開されていないが、37000人が参加した非公式ランキングサイトの投票でも善逸くんは女性から7割近い支持を集めて2位に輝いている。
これは善逸くんが鬼殺隊の中でも年少で、「かわいい」キャラに救われている面もあると思うが、もうひとつの理由は善逸くんが「禰豆子ちゃんラブ」であることにあるのではないかと思う。
登場時は女の子なら誰かれかまわず抱きついたりする善逸くんだったが、不思議なことに炭治郎の妹である禰豆子ちゃんに対してはエッチではなくラブが優先する。『鬼滅の刃』の中で禰豆子というのは女性読者からの感情移入が強い、暴力のトラウマを想起させるデリケートな女性キャラクターであり、彼女に対して善逸くんがすごく優しくピュアラブ路線というのはひとつのポイントなのかもしれない。
もっとも、善逸くんが1位だからと言って『鬼滅の刃』のテーマを善逸くんがすべて体現しているのかというとそうではなく、煉獄さんはじめ鬼殺隊の錚々たる先輩たちに「尊敬票」が分散する中で、善逸くんに「共感票」が流れ込む形になった面もあるのではないかと思う。
第1回の時点では「柱」メンバーの人物像などはまだ詳細に描かれていなかったのだが、第一回で55票で29位だった「霞柱」時透無一郎が、第二回では200倍以上(!)の11948票で3位になるなど、「柱」メンバーが軒並み大躍進でトップ10を席巻しており、柱同士の壮絶な争いの中でポコッと1位を取ってしまうというのもすごく善逸くんらしいとは言える。
さて、鬼殺隊のメンバーから悪役である鬼の側に目を向けてみよう。まず最初に、基本的に鬼滅ファンの人気は鬼殺隊>鬼に傾いていて、10位以上はすべて鬼殺隊、鬼はみんな10位以下である。これは正義は正義、悪は悪という作品の価値観が読者に浸透しているとも言えるかもしれない。