昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

CDB

2020/11/07

鬼の側では逆転現象

 しかしながら目を引くのは、鬼の総大将である鬼舞辻無惨(23位735票)よりも、その部下である上弦の鬼、黒死牟(14位2938票)や猗窩座( あかざ 17位1982票)の方が上位に来ている点である。

映画予告編より

 無惨様というのはドラゴンボールやジョジョで言えばフリーザやDIOにあたるボスキャラで、少年漫画では時に悪のボスにも人気が出ることがあり、無惨様も第一回の時点では11位285票と鬼側ではトップに座っていた。しかし鬼殺隊における善逸くんとは逆の現象で、部下の鬼たちがあまりに魅力的なので第二回では無惨様票が分散して割れた可能性はある。

 また、『鬼滅の刃』という作品の特徴として、鬼たちが人間をやめるに至った悲劇性の描写があり、特に猗窩座などは人間時代の記憶が邪魔して女性を殺して食うことができない、といった複雑な精神性が読者を惹きつけるのに対し、無惨様は平安貴族だった人間時代からささいな理由で善良な担当医師の頭をナタのようなものでホームランしてしまい、そのせいで不死と太陽光に弱いという謎が解けなくなって1000年生き迷うという、非常に庶民が共感しにくいライフストーリーが災いした面もあるだろう。

 ここで注目したいのは鬼の中でも「下弦の鬼」と呼ばれるやや弱めのグループからトップ20にランクインしている「魘夢(えんむ 16位2435票)」である。驚くべきことに、比較にならないほど強い上弦の鬼である猗窩座( あかざ 17位1982票)や童磨(18位1589票)、ボスである無惨様(23位735票)よりも人気がある。しかもこの魘夢の場合、猗窩座のように読者の感情移入をさそう悲劇的なストーリーは特にないのである。強いわけでもなく、かわいそうなわけでもない。普通ならここまで人気になるキャラクターではないように見える。

映画予告編より

 しかし僕はこの魘夢というキャラクターは、強さや悲劇性とは別のところでやはり優れた造形の悪役キャラクターであり、ある意味では現在歴史的大ヒット中の『「鬼滅の刃」無限列車編』の大成功の立役者であると思っている。そのポイントは彼、魘夢の「斬られっぷりの良さ」「ちょうどいい悪党」感にある。