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2020/11/21

source : 文春新書

genre : 社会, 読書

造田博教の教義

 【造田博教では決まった献金は平均収入の10分の1か、100分の8ぐらいで、これ以上はないです】

 そして、このあとは何の脈絡もなく、行を換えて、思うところを書き綴る。

 【造田博教ではトイレを自由にするのがいいと思っています。あと小便や大便をもらしてもふれないようにするのがいいと思っています】

 【私はまずいものは食べないのがいいと思っています。世界中でのことです】

 【私は精神と体は死んでからは別だと思います。生きている間も精神と体は別だと思います。これはたぶんです。生きている間は精神と体は同じように感じるとも思っています】

 ところどころ、ボールペンで間違えた文字を塗り潰しながら、何処か幼稚さの残る文字で、彼は淡々と訴えている。

 あるいは、自身の事件や犯行に触れないまでも、こんな一文を記載していることもある。

 【道を歩いている時に知らない人で本当に困っている人がいたら手助けしたり助けたりするのがいいと私は思っています】

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 【私は他の人に危害を加えるのと加えないのとではすごく違うと思っています。他の人に危害を加えるのがだめな方で、危害を加えないのがいい方です。間違えると困るのでもう1回書きます。他の人に危害を加えるのが×で、危害を加えないのが○です】

 【私は変な人は永遠の無限地獄に刑法や法律とかで落とすのがいいと思っています。永遠の無限地獄は永遠に地獄が増え続ける地獄の事です。ここの事は時間がかかるかもしれません】

 そして、いつも彼は文末にふたつの定型句を書き足していた。

 【私の思った事を適当に書いただけなので、あまり深刻に考えないで下さい】

 【ボールペンで消している所があります】

 何かに取り付かれたように、必ずこの2文を言い訳のように書く。それは「造田博教」と書き綴ったあとに「(仮名です。まだ決まっていません。)」と注釈をつけるのも同じだった。