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「選手が認めやんだらばれへんわな」3億円超の利益を生んだ八百長“1号艇ブッ飛び作戦”とは

「選手が認めやんだらばれへんわな」3億円超の利益を生んだ八百長“1号艇ブッ飛び作戦”とは

『競艇と暴力団「八百長レーサー」の告白』より #2

2020/11/22
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短期間に犯した二度の「F」

 だが2015年5月、俺は「節間F2」という、大きなミスを犯してしまう。同一シリーズにおいて、スタート事故であるフライングを2度も切ってしまったのである。

 スタートは、早く行けば行くほど有利になるが、踏み込みすぎてフライングすると、その艇に関する舟券はすべて払い戻しとなる。特に大きいレースでフライングすると、施行者側に大きな打撃を与えることになるため、「Fを切るな」は、この業界でお経のように唱えられるフレーズだ。

※写真はイメージです

 ペナルティは、1本目のFで30日。2本目で60日。合わせて90日間の出場停止だ。ちなみに3本目になるとさらに90日の休みが追加される。3本フライングを切ったら半年休み。半年間の間にフライングが4本以上となったら、もはや引退勧告級だ。

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 フライングしてしまうのもひとえに自分の実力とはいえ、ここでの3ヵ月間休みはかなり痛かった。

 当時の俺の心のどこかに「なかなかうまくはいかんな」という思いが残っていたのかもしれない。もちろん、それを不正に走った言い訳にするつもりはない。それは俺の「弱さ」そのものだった。

1号艇「ブッ飛び」作戦

 ジュンとの「悪の密談」から数日が経過し、俺は岡山県の児島競艇場で2016年2月11日から開催される6日間シリーズの一般レースに参戦した。

 競艇選手はレースの期間中、携帯電話を施行者に預け、外部との連絡は一切できないようになっている。過去、通信機能付きの端末を持ち込んだ選手が、1年間の出場停止処分を受けたこともある。もちろん、不正防止が目的だ。

 俺とジュンは、手始めにもっともシンプルな八百長を試すことにした。それは、次のような計画だった。