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連載昭和事件史

令嬢、女優、伯爵夫人…有閑階級がダンスホールで入り乱れた「乱倫」事件とは?

――「有閑マダム」「ジゴロ」「乱倫」…戦前最後のあだ花「ダンスホール事件」 #1

2020/11/22

 父とは斎藤家をモデルに「楡家の人びと」を書いた作家・北杜夫だ。「決して自分の過ちを認めず、『ごめんなさい』も一言も言わない輝子」という孫の記述は、70歳を過ぎて南極をはじめ、世界中を飛び回り、テレビにも登場。「猛女」と呼ばれた女性にふさわしいように思える。「乱倫」の真偽は不明だ。

「大部分ジゴロと言われても文句のない存在なのです」

※写真はイメージ ©iStock.com

 関連の記事の中で注目すべきは東朝の「教師が悪いか―マダムが悪いか」という見出しの記事だろう。「東京社交舞踏教師会の有力なメムバーであるNホール教師Aの語った話」だ。

 私どもの商売はダンス教師と呼ばれていますが、事実は大部分ジゴロと言われても文句のない存在なのです。私どもは所属するホールから一文の定給ももらっておりません。ダンサーが男の客を大切にするように、私たちも……。でなければ生活が成り立ちません。

 世間からダンサーの収入を尋ねられる時ほど嫌なことはない。半月も教えてやった娘がつっかけ70円、80円になるのです。それに反して、先生と呼ばれるわれわれの収入のみじめさ。

 教師が悪いか、有閑マダム、令嬢に罪があるか。ご婦人方も男の客と同じく種々雑多です。真にダンスの好きな方、映画を見るような軽い気持ちで来る人、そしてまた、歌舞伎の役者に近づきになりたい欲望を、ダンスという近代様式に求めようとする人などなど。お茶に招かれて断れば、その時からサヨナラであることは言うまでもないことです。一度に30枚、50枚とチケットをくれるご婦人のあることは事実です。

 教師界の発達、警視庁の監督も必要ですが、最も緊要な対策は、純然たるダンスホールでもなければキャバレーともつかない、現在の中間状態をやめてしまうことではないでしょうか。

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