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「あしたは あめがふるよぉ」 九州で語り継がれる“行くと絶対死ぬ家”の話

「あしたは あめがふるよぉ」 九州で語り継がれる“行くと絶対死ぬ家”の話

2020/12/28
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戦後から語り継がれてきた“行くと絶対死ぬ家”のおぞましい過去

 Tさんいわく、その地方は市街地から割と距離があり、当時は病院に行くのではなく、産婆さんを呼んでの自宅出産が常だったそうだが、そのときだけはなぜか誰も呼ばなかったという。

 そんなこともあり、近隣住民は「死産になったのでは……」と、一家の周囲で耳をそばだてながら心配していたそうだが、程なくして何人かの住民が“赤ん坊の泣き声”を聞いたそうで、近隣住民たちは胸をなでおろした。だが、奇妙な出来事はその“赤ん坊の泣き声”を聞いた翌日に起きた。

 出産のお祝いも兼ねてその一家を訪ねた隣人が、首を吊って心中している一家を見つけたのだ。しかもその一家の面々は、それぞれの部屋で個別に首を吊っていたという。

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 この大事件に、市からも警察が駆けつけ、現場の調査が行われた。そこで明らかになったのはさらなる不可解な出来事であった。

「牛舎にいた牛が全部、のど掻っ切られて死んでいて、その後、火を付けられて黒焦げになっていたんだって……」

※写真はイメージ ©iStock.com

「あのさ……その、前日に生まれた赤ちゃんはどうしたの……?」

「ああ、なんかね、もはや原形がわからなかったらしいけど、牛と一緒に黒焦げになった赤ん坊の頭蓋骨が見つかったんだって」

ときは平成――無謀な不良グループが“例の家”への突入を計画

 その後、なぜかその家は取り壊されることなくそこにあり続け、時代は平成に。

 その頃になると、“例の家”の噂は、地元大学の不良たちの間でも語り継がれていた。だが好奇心といたずら心に抗えない彼らでさえ、“近づいてはいけない場所”として恐れていたという。

 だが、そうした暗黙の了解ができると、必ずそれを破ろうとする輩が現れるもの。不良グループの間でも、やんちゃと噂の一団が、“例の家”への突撃を計画したのだ。